研究課題
一酸化窒素(Nitric Oxide : NO)が生理活性を示す機序であるS-ニトロシル化反応(SNO化)が細胞内で生じる過程を,時空間的に解析可能とするリアルタイムイメージング手法を開発することを目的として,SNO化に反応して蛍光強度が変化する緑色蛍光蛋白質(GFP)の開発をおこなった.SNO化修飾はシステインSH基に対して起きるタンパク質の翻訳後修飾であるが,対象となるシステイン周囲を取り囲むアミノ酸によりSNO化モチーフが形成されることが特異的なSNO化をもたらす重要な因子であると考えられてきた.そこで,まずGFPのアミノ酸222番近傍にSNO化モチーフを形成する様にアミノ酸変異を導入し,SNO化に伴う蛍光強度の変化を検討した.SNO化処理に対する反応は認められたが,蛍光強度の変化としてとらえられる程度は小さく,効率的なSNO化測定を行なうためには不十分であった.平成25年度は継続して,GFPの205番にシステインを導入し,立体構造上近傍に位置する部位にランダム変異を導入し得られたクローンをSNO化処理に対する蛍光強度変化を指標としてスクリーニングを行ない,前年度得られたクローンも含めアミノ酸変異の場所とSNO感受性の増大をタンパク質立体構造上での位置関係を考慮して検討をおこなった.この結果,システイン近傍のアミノ酸に変異が導入されSNO感受性が亢進する場合よりも,Cys205からやや離れた部位に変異が導入された結果,GFPのバレル構造にゆがみが生じSNO感受性が大きく変化した場合が多く認められた.すなわち,Cys205近傍の構造的な変化がSNO化修飾反応に対する反応性を強く規定することが示唆された.これらの結果より,従来考えられてきたシステインpKaを変化させるアミノ酸モチーフ以上にシステイン周囲の構造的な要因が強く働くことが明らかになり,SNO化修飾が特異的に生じる機序に新たな視点が与えられ,シグナル伝達におけるSNO化修飾の生理的重要性を示す事にもつながった.
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http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/pharmacology/