脳血管内皮細胞株であるb.End5を用い、LPS、TNFα、IL-1β、IFN-γの混合炎症惹起物質を作用させることによってin vitroで効率の良いendothelial microparticles (EMP)の産生方法の確立を行うとともに、EMPの定量的な測定方法の開発、さらにはEMP含有物質(蛋白質、micro RNA)の同定を目的として研究を行った。本研究の結果、in vitroで炎症惹起させた血管内皮細胞から、炎症の強度に相関して効率よくEMPが産生されることが明らかとなった。また、電子顕微鏡を用いた観察結果から、EMPは細胞膜表面から出芽する形態をとっていた。MiRNA array解析の結果、EMPには多数の炎症関連miRNAが包含されており、炎症の強度に正の相関を示すものが見出された。それらmiRNAのin silicoターゲット解析の結果とEMPの出芽様式を詳細に解析した結果から、血管内皮細胞を被覆するペリサイト/血管平滑筋細胞がEMPの標的である可能性が示唆された。培養ペリサイトに対してEMPを作用させた実験では、EMP非作用群と比較してEMP作用群で有意にVEGF-BのmRNAおよび蛋白質の発現が上昇していた。以上より、炎症状態における血管内皮細胞から産生されるEMPは、近傍のペリサイト/血管平滑筋細胞に作用し、細胞の状態を変化させる活性を有することが示された。また、その活性本体はEMPに含有されるmiRNAであることが強く示唆された。
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