1.シナプス小胞からの測定:グルタミン酸あるいはGABAといったアミノ酸神経伝達物質を含むと考えられる大脳皮質ニューロン由来シナプス小胞をラット脳より調製した。この標本を金電極に付着させ、灌流液をATP含有液に高速置換したところATP誘発電流を濃度依存的に観測できた。この応答はbafilomycin A1あるいはMg2+存在下で抑制されたことからシナプス小胞膜でinside-out配置にあるV-ATPaseに基づく応答であると確認できた。しかしながら、この標本においてNa+/K+(あるいはH+)濃度勾配を作った後にグルタミン酸あるいはGABAなど神経伝達物質を適用しても基質輸送電流は観測できなかった。 2.ミトコンドリア内膜輸送の解析:マウス心臓ミトコンドリア標本を用いて、Na+/Ca2+交換輸送体(NCX)電流の測定を膜を付着させた金電極にて試みた。Ca2+を負荷した標本で灌流液をNa+に高速置換する方法により、ON時に正方向、OFF時に逆方向の電流応答が観測できた。しかしながら観測された電流応答は予想されたのとは逆向きの電流応答であり、NCX阻害剤に対して感受性を持たなかった。したがって、ミトコンドリア膜に存在するmtNCX電流応答そのものではなく、何らかの副次的応答を検出していると結論された。 3.リソソーム膜イオン輸送の解析:マウス肝よりリソソーム膜標本を作成し、標本純度を確認した後、この標本を金電極に付着させ、灌流液をATP含有液に高速置換したところATP誘発電流を濃度依存的に観測できた。この応答はbafilomycin A1あるいはMg2+存在下で抑制されたことからリソソーム膜でinside-out配置にあるV-ATPaseに基づく応答であると確認できた。
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