研究課題
脳内ミクログリアは、組織傷害性に働く「古典的活性化状態」と組織保護・修復性に働く「オルタナティブ活性化」と呼ばれる異なる活性化状態を取り得る。本研究は、ミクログリアのオルタナティブ活性化を誘導する細胞内外シグナル伝達機序の解析を行うとともに、病態脳内のミクログリアを組織保護・修復性に指向させる化合物の探索・同定を企図した。1) ミクログリア様細胞株BV-2細胞において、LPS処置により誘導される古典的活性化(iNOS発現の誘導)は、GABAによって有意に抑制された。一方で、IL-4により誘導されるオルタナティブ活性化(アルギナーゼ-1発現の誘導)は、GABAによって促進された。同様の効果は、GABAB受容体選択的作動薬のバクロフェンにも認められた。したがって、GABAB受容体作動薬が新たなミクログリア活性化制御薬の分子ターゲットとなりうる可能性が明らかになった。2) PPARα/γ作動薬活性を有することが報告されている天然化合物の効果について検討したところ、単独処置によりBV-2細胞のアルギナーゼ-1の発現を有意に増大させることが判明した。次いで、同化合物を培養中脳組織切片に適用し、ドパミンニューロン保護効果について検証したところ、IFN-γ/LPS処置により誘導されるミクログリアの古典的活性化を介したドパミンニューロン変性が著明に抑制された。またこの保護効果は、アルギナーゼ-1阻害薬を共処置することによって消失した。したがって、当該化合物はミクログリアのオルタナティブ活性化の誘導促進を介して作用を発揮する新しいタイプのドパミンニューロン保護薬となりうる可能性が示された。
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