研究課題/領域番号 |
24659120
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東 秀明 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 教授 (20311227)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細菌 / タンパク質 / 感染症 |
研究概要 |
常在腸内細菌感染が宿主免疫機構に依存し腫瘍形成を誘導することが明らかにされ、腫瘍ウイルス感染と同様に細菌感染が潜在的に発癌のリスクファクターとなることが示唆された。 本課題は、C. trachomatis Tarpの分子機能を分子レベル及び遺伝子改変マウスを用いた個体レベルで検討し、細菌感染が宿主腫瘍形成に及ぼす影響を明らかにしていく。 1)C. trachomatis L2株ゲノムよりtarp 遺伝子のクローニングを行い、Tarp 細胞内標的分子の探索を行うのに必要とされる大腸菌及び哺乳類細胞を利用した異所性発現系の構築を進めた。また同時に、Tarp分子内の繰返し配列中に存在するチロシンリン酸化部位へ変異を導入した、リン酸化耐性型Tarpの作出し、野生型Tarpと同様に異所性発現系の構築を遂行した。リン酸化型及び非リン酸化型Tarpの全長タンパク質を大腸菌及び哺乳類細胞内それぞれに発現させることに成功し、現在、細胞内標的分子の探索及びタンパク質相互作用の解析に用いる精製tarpの調製を進めている。 2)個体レベルにおけるTarpの発癌への関与を明らかにするため、Tarpトランスジェニックマウスの作成準備に着手した。マウスにおけるTarp発現の時空間的な制御を行うため、恒常的な全身発現系に加えCre-loxPを用いた発現系ユニットの構築を進めた。構築した発現ベクターを用い、Tarpの発現制御、発現量に関して確認を行いファウンダーマウスの作製へ移行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備的に研究において構築済みであった哺乳類細胞おける野生型Tarp異所性発現系を用い、細胞内標的分子の探索を試行したところ、電気泳動上でTarp結合タンパク質が確認された。しかしながら、共沈殿してきたタンパク質の量的な問題から、標的分子の同定には至らなかった。そのため、発現系及び検出系の見直しを行うことで、共沈殿物の量的な問題を解決し、細胞内標的分子の探索を継続遂行している。直面した問題を短期間で解決できたことから、研究計画に大幅な遅れは生じなかった。一方、トランスジェニックマウスの作製に関しては、発現ユニットの構築等ほぼ順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1. Tarp 細胞内標的分子の探索およびチロシンリン酸化依存的な分子機能の検討 a) 野生型Tarpおよびチロシンリン酸化部位に変異を導入した一連の改変型Tarp分子を細胞に異所性発現させ、免疫沈降反応および質量分析機を用い、相互作用を示す細胞内タンパク質を網羅的に比較、検討する。同定された分子情報より、Tarp生物活性発現に必要とされる分子機構およびチロシンリン酸化がTarpの分子機能に及ぼす影響を明らかにする。 b) 同定された分子に関する分子生物学的および細胞生物学的解析を進め、Tarpにより修飾される細胞内シグナル伝達系の全容を明らかにしていく。また、子宮頸癌発症に深く関わるE6及び E7といったHPV病原因子群とTarpにより修飾されるシグナル系の関係を検討する。この時、同一細胞内における病原因子群の相加または相乗的な影響に加え、単層培養細胞を用いた近接細胞間における相互的な影響を検討する。 2.DNAチップ解析を用いたTarpにより攪乱されるシグナル系の解明 Tarpを異所性に発現している細胞を用い、Tarp発現に伴った遺伝子発現の経時的変化をDNAチップ法で解析する。得られた解析結果に基づき、細胞内標的分子の探索結果と併せてTarpにより撹乱される細胞内シグナル伝達系の全体像を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の遂行にあたり、ほ乳類細胞の維持及び細胞への遺伝子導入操作は必須であり、血清、遺伝子導入試薬の購入費を細胞培養試薬として申請した。分子機能解析用サンプルの調製に用いる、蛋白電気泳動用試薬ならびに抗体購入の費用は生化学試薬として計上している。設備備品として、タンパク質抽出等に利用可能な高速遠心機用ローターを購入予定とした。旅費に関しては、本申請課題において得られた新知見を学会において発表するため、国内旅費を計上した。
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