研究課題/領域番号 |
24659120
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東 秀明 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 教授 (20311227)
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キーワード | 細菌感染 / タンパク質リン酸化 / 発がん |
研究概要 |
常在腸内細菌感染は宿主免疫機構に依存し腫瘍形成を誘導する。このことは、腫瘍ウイルス感染と同様に細菌感染は潜在的な発癌リスクファクターとなることを示唆する。そこで本課題は、Chlamydia trachomatis Tarpの分子機能を分子レベル及び個体レベルで解析し、細菌感染が細胞の癌化に与える影響を明らかにすることを目的とした。昨年度 C. trachomatis L2株由来 tarp 遺伝子を用い、ほ乳類細胞及び大腸菌を用いた異所性発現系を構築し、Tarp 分子の細胞内標的分子の探索及びチロシンリン酸化依存的な分子機能・生物活性の解析に着手した。本年度は、C. trachomatis Trapとはリン酸化状態が区別される、C. pneumonia Trap分子を合わせて用い、チロシンリン酸化に依存したTarp 分子の機能解析を進めた。その解析過程において、細胞内に発現したTarp 分子のリン酸化に関して、これまでの報告と異なる事象に直面した。本研究計画は、チロシンリン酸化に依存したTarp分子機能を個体レベルで解析することを目的としている。そのため、今回培養細胞を用いた実験結果の検証が必用である。昨年度より、Tarpトランスジェニックマウス作成に必用な発現プラスミドの構築を進めていたが、本年度は、ほ乳類細胞内に異所性発現したTarp分子のリン酸化状態の解析を進めると共に、Tarp発現細胞の増殖、形態等の解析を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tarpトランスジェニックマウスの作製を一時中断しているが、組換え用発現初ニットの構築など順調に進捗している。Tarp分子のチロシンリン酸化に関して、細胞レベルの更なる解析が必用となったため、遺伝子改変マウスの作出まで至っていない。しかしながら解析に要する、リン酸化耐性Tarp分子の作製ならびに C. trachomatis Trapとはリン酸化状態が区別される C. pneumonia Tarp 分子発現系の構築は完了しており、今後の解析は効率良く進められるものと考えている。培養細胞を用いた解析結果に基づき Tarpトランスジェニックマウス作出に適したTarp 遺伝子を選択し、直ちに組換えマウス作製に移行できる状況をにある。
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今後の研究の推進方策 |
1. 野生型Tarpおよびリン酸化耐性Tarp分子を細胞に異所性発現させ、相互作用を示す細胞内タンパク質を網羅的に比較、検討する。同定された分子より、Tarp生物活性の分子機構を明らかにする。同定された分子に関する分子生物学的および細胞生物学的解析を進め、Tarpにより修飾される細胞内シグナル伝達系の全容を明らかにしていく。また、子宮頸癌発症に深く関わるE6及び E7といったHPV病原因子群とTarpにより修飾されるシグナル系の関係を検討する。 2. 個体レベルにおけるTarpの発癌への寄与およびその発症機構を解明するため、Tarpトランスジェニックマウスを作成する。ファウンダーマウスの同定は、ゲノムPCR、ウェスタンブロット等の手法を用いて検証し、Tarpの発現レベルが高いマウスを用い系統を樹立する。また、このときリン酸化耐性型Tarpを発現する遺伝子改変マウスも併せて樹立し、チロシンリン酸化がTarp生物活性に及ぼす影響を個体レベルで明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度までに、C. trachomatis Trap遺伝子導入マススの作製準備を完了する予定であった。しかし、マスス作製の前段階である、培養細胞を用いたTarp分子修飾に関する解析において、既報の発表内容とは異なる事象に直面した。本研究計画は、分子修飾に依存したTarp機能を個体で解析することを目的としており、今回細胞で得られた結果の検証が優先されると考え、マウス飼育予算等の使用に関して遅延が生じ、次年度使用額が発生した。 本研究の遂行にあたり、ほ乳類細胞の維持及び遺伝子導入操作が必用であり、遺伝子導入試薬等の購入費を細胞培養試薬としている。分子機能解析用サンプルの調製に用いる、蛋白電気泳動用試薬ならびに抗体購入の費用は生化学試薬として計上した。また、物品費には本課題で作製するマウスの作製費及び維持費を含めて計上している。旅費に関しては、本申請課題において得られた新知見を学会において発表するため、国内旅費を計上した。
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