研究課題
ES細胞の多能性を規定する因子として発見された4つの因子が、全て転写因子であったことから、転写因子による遺伝子発現制御の重要性が再認識されている。本研究では転写因子による遺伝子発現制御の解明を目的に、さまざまな転写因子によって転写調節領域に特異的にリクルートされる転写コアクチベーターやクロマチン制御因子を、マイクロビーズに固定化したヌクレオソーム付きの転写調節領域を用いて、網羅的に同定する。これまでに、類似の方法を用いて、転写因子存在下にメディエーター複合体が新規転写複合体を遺伝子上にリクルートすることを明らかにした【Takahashi H, et al. Cell 2011】。今年度は、肝細胞の分化に必須の転写因子HNF4alphaによって特異的にリクルートされる転写制御因子を同定するために、HNF4alpha結合配列を有する転写調節領域DNA、HNF4alphaのリコンビナントタンパク質を作製した。また、肝がん細胞株HepG2細胞の大量培養を行い、その核抽出液を精製した。現在、HNF4alpha結合配列を有する転写調節領域DNAをクロマチン化するために、DNAをヌクレオソームに巻く過程の実験を行っている。転写調節領域DNAをヌクレオソームによってクロマチン化した後、マイクロビーズに固定化し、クロマチン化転写調節領域マイクロビーズを作製する。ビーズを作製後に、HNF4alphaリコンビナントタンパク質と核抽出液を用いて、HNF4alphaによって転写調節領域にリクルートされる転写制御因子の精製を行う。
2: おおむね順調に進展している
HNF4alphaのリコンビナントタンパク質、HNF4alpha結合配列を有する転写調節領域DNA、肝がん細胞株の核抽出液、DNA鋳型のクロマチン化に必要なヌクレオソームの精製など、本法の確立に必要な試料の作製は順調に進んでいる。クロマチン化転写調節領域マイクロビーズを作製後に、リコンビナントタンパク質のHNF4alphaと核抽出液を用いて、HNF4alphaによって転写調節領域にリクルートされる転写制御因子の精製を行う。
クロマチン化転写調節領域マイクロビーズを作製し、それをリコンビナントタンパク質のHNF4alpha、肝がん細胞株の核抽出液と混合し、HNF4alphaによって転写調節領域にリクルートされる転写制御因子の精製を行う。精製した転写制御因子を直接トリプシンで消化した後、質量分析計を用いて網羅的に同定する。同定された転写制御因子が核内でタンパク質複合体を形成しているかどうかを、生化学的手法により調べる。また、同定された転写制御因子が実際に肝細胞において、HNF4alphaと共にその標的遺伝子の発現を制御しているかどうかを、ChIP解析を行い明らかにする。さらに、HNF4alphaをノックダウンした場合に、同定された転写制御因子の標的遺伝子領域へのリクルートが減少するかどうかもChIP解析によって明らかにする。また、同定された転写制御因子をノックダウンした場合に、HNF4alphaの標的遺伝子の発現が低下するかどうかも検討する。
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巻: 287 ページ: 12050-12059
10.1016/j.celrep.2012.09.031.
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http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~d20505/takahashi/