私たちはこれまでの解析により,GCN1L1をノックダウンしたU373MG細胞(グリオーマ)では,ジエチルマレイン酸などの酸化ストレスによるNrf2の活性化およびNrf2標的遺伝子の発現誘導が低下していることを報告した.そこで,GCN1L1の役割の細胞特異性を調べるため種々のがん細胞を用いてGCN1L1のノックダウンにより解析した. GCN1L1をノックダウンしたT-24細胞(膀胱癌細胞),U87MG細胞(グリオーマ)においては,U373MG細胞と同様に酸化ストレスによるNrf2の細胞内蓄積の減弱が観察された.GCN1L1をノックダウンしたU373MG細胞では酸化ストレスによるAKTのリン酸化(Ser473番目のリン酸化)が減弱していたが,T-24細胞ではそれが観察されなかったことからGCN1L1の役割は細胞種ごとで異なることが示唆された.HeLa細胞において解析すると,GCN1L1のノックダウンは酸化ストレスによるNrf2の細胞内蓄積には影響を与えなかかったがHO-1のタンパク質レベルでの誘導を減弱した.このことは,GCN1L1がNrf2の制御とは独立してHO-1の発現制御を担う可能性を示唆した.さらにU373MG細胞では,GCN2のノックダウンがHO-1のタンパク質およびmRNAレベルでの発現を著明に増加することから,GCN1L1-GCN2経路はHO-1の発現調節に関与していることが考えられた.
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