研究課題
大津は前年度に引き続き標的細胞へのプローブ導入に備え、造血幹細胞におけるシグナル伝達様式の解析、細胞表面マーカーによる分画および、幹細胞機能評価法の至適化を行った。特にIL-1/IL-1R、SDF-1/Cxcr4シグナルに着目し、後者においてはレセプター改変後の細胞におけるシグナル分子のリン酸化を評価した。その結果、本研究課題が究極に目指す高品質の造血幹細胞分取に向けて、従来考えられてきたAKTではなく、ERKリン酸化のキネティックスがより幹細胞機能と相関する可能性が示された。片山は高分子イオン錯体型の蛍光プローブの開発を検討した。内部標準としてCy5を濃度消光が起きない程度、カチオン性基質ペプチドを側鎖に有するデキストランに導入し、一方、キナーゼ応答型の蛍光を与えるためのTAMRAをポリアスパラギン酸に導入したポリマーも合成して両者を混合し、ポリイオン錯体型ナノ粒子を調製した。得られたナノ粒子はCy5の蛍光はナノ粒子形成によっても不変であったが、TAMRAの蛍光は大きく消光した。一方、標的キナーゼでデキストラン側鎖の基質ペプチドをリン酸化するとTAMRAの蛍光は大きく回復し、Cy5の蛍光は変化しなかった。そこで、両者の蛍光強度比を取ることで、正確にキナーゼ活性が評価できた。蛍光強度比を用いてキナーゼ阻害剤の阻害定数を評価することも可能であった。本プローブは、キナーゼ蛍光プローブとして、特に濃度や組織・細胞の厚みの影響を受けずにin vivoや培養細胞で正確に活性を評価できる可能性がある。以上、本課題研究期間内には計画の完遂には至らなかったものの、研究分担者との協力によって目的達成のための基盤技術の整備を完了した。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件)
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