研究課題/領域番号 |
24659132
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 拓也 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20311730)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オーファン受容体 / GPCR / 抗体 / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
G蛋白質共役型受容体(GPCR)は細胞膜を7回貫通する特徴的な構造を有し、細胞外からの情報(神経伝達物質、ホルモン、味、光など)を認識する細胞センサーである。また、市販医薬品の5割以上が、GPCRをターゲットにしており、GPCRは重要な創薬ターゲット分子として注目されている。ヒトゲノムプロジェクトにより、遺伝子には約600種のGPCRが存在すると言われている。しかし、今なお約160種のGPCRは内在性リガンドが不明な「オーファン受容体」と呼ばれている。本研究は、GPCRの立体構造を基盤としたリガンドの探索を目指している。そのために、オーファン受容体を発現・精製、結晶化することにより、原子分解能レベルでリガンド結合ドメインの構造を解明したい。将来的には、X線結晶構造解析とシステムバイオロジーを融合させたGPCRの理論的なリガンド分子設計に寄与したい。これまでに酵母において発現の高かった苦味受容体と昆虫細胞において発現の高かったGPCR(オーファン受容体)を発現、精製し、リポソームに再構築した後、マウスに免疫したい(リポソーム免疫法)。スクリーニングには、リポソームELISA法、ドットブロッティング、Biacoreを用いる。本年度は、これらのGPCRの立体構造を認識する抗体を作製するために、我々の実験で発現の高いことが分かっているGPCRについて、大量発現及び精製を試みた。しかし、本年度にターゲットとしたGPCRは思った以上に安定性が悪く、精製途中に壊れてしまうことが明らかとなった。そこで、より安定な変異体をスクリーニングすることに計画を変更し、C末端に付加したGFPを指標として、アミノ酸残基の変異や構造解析に頻繁に使用される安定化蛋白質(リゾチーム、シトクロームbなど)をN末端や第三細胞内ループに付加し、界面活性剤で可溶化したあとの変異体の蛍光単分散性を評価することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、まず始めに1)GPCRのを発現、精製し、再構築したプロテオリポソームをマウスに免疫し、次に2)結晶化リガンドとして立体構造認識抗体のスクリーニングを遂行する予定にしていた。具体的には、これまでの我々の実験で、酵母において25種類の苦味受容体の高発現株をスクリーニングした結果、最も発現の高かった苦味受容体(TAS2R16, 41など)と昆虫細胞において発現の高かったGPRファミリーの一つであるGPCR(オーファン受容体)を順次大量発現・精製する計画を立てていた。しかし、実際に大量発現したGPCRの精製を試みると、精製途中にターゲットが次々と凝集をおこし、GPCRを安定に精製することができなかった。そこで、本年度は計画を変更し、まず始めに、野生型受容体よりも、安定な変異体をスクリーニングにすることにした。GPCRの安定化に関与するアミノ酸残基をリストアップして、アミノ酸残基変異体を作製したり、これまでに構造解析に使用されている安定化蛋白質(リゾチームやシトクロームbなど)をN末端や第三細胞内ループに付加した。オーファン受容体をターゲットにしているため、リガンド結合実験やセカンドメッセンジャーの測定といった生化学的解析ができず、機能を完全に保持した状態でGPCRを安定化しているのか、不安な点はあるものの、C末端に付加したGFPを指標として、蛋白質として安定な変異体を蛍光単分散性によりスクリーニングしている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、抗体作製用の抗原の調整が準備できなかった。早急に安定化変異体のスクリーニング、あるいは精製方法の最適化により、抗原の調整を行いたい。精製したGPCRは、サルモネラ菌由来のlipid Aとホスファチジルコリンで再構成しプロテオリポソームとしてマウスに免疫する。アデノシン受容体の場合、精製標品免疫に比べ、リポソーム免疫の抗体価は10-20倍上昇する。抗体の一次スクリーニングには、リポソームELISA法を用いる。具体的には、GPCRをビオチン化脂質含有リポソームに再構成し、ストレプトアビジンプレートへ固相化する方法で、立体構造を認識する抗体とフレキシブルな領域(N末端、C末端など)を認識する抗体がスクリーニングされる。スクリーニングされた抗体は、ドットブロッティングを行い、SDSで変性させたGPCR(フレキシブルな領域)を認識する抗体を除去する。二次スクリーニングには、Biacoreを用いる。具体的には、市販のセンサーチップ表面に抗マウスFcフラグメント抗体を固相化し、スクリーニングされたハイブリドーマの培養上清を流して抗体分子を補足させた後、精製GPCRを送液して応答を観測する。観測の済んだチップは、酸性条件で洗浄することで何度でも再生することができる。得られたセンサーグラムの形状から培養上清間の親和性を比較することができ、良好なものについては、カーブフィッティングにより反応速度定数や解離定数が推定できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
「GPCRの発現、精製、リポソーム免疫」 GPCRの発現には、酵母培養用培地、昆虫細胞用培地、血清の購入、精製には、アフィニティーレジン、界面活性剤の購入を考えている。 「結晶化リガンドとしての立体構造認識抗体のスクリーニング」 プロテオリポソーム調整には、リピッド一式、免疫には、マウス、飼育管理費、抗体のスクリーニングには、ELISA用のストレプトアビジンプレート、酵素標識された二次抗体、Biacore用のセンサーチップ、抗体の大量調整には、ハイブリドーマを使った腹水化費用を考えている。
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