G蛋白質共役型受容体(GPCR)は細胞膜を7回貫通する特徴的な構造を有し、細胞外からの情報(神経伝達物質、ホルモン、味、光など)を認識する細胞センサーである。また、市販医薬品の5割以上が、GPCRをターゲットにしており、GPCRは重要な創薬ターゲット分子として注目されている。ヒトゲノムプロジェクトにより、遺伝子には約600種のGPCRが存在すると言われている。しかし、今なお約160種のGPCRは内在性リガンドが不明な「オーファン受容体」と呼ばれている。本研究は、GPCRの立体構造を基盤としたリガンドの探索を目指している。そのために、オーファン受容体を発現・精製、結晶化することにより、原子分解能レベルでリガンド結合ドメインの構造を解明したい。これまでに、GFP出芽酵母発現システムを使って安定化したオーファン受容体を発現、精製、リポソームに再構築した後、マウスに免疫した。抗体のスクリーニングには、リポソームELISA法、ドットブロッティングを併用して用いた。その結果、安定化に使用した親水性蛋白質(T4L、bRILなど)の抗体かN末端やC末端のシークエンシャルなエピトープを認識する抗体しか取れなかった。そこで、昨年度に引き続き、コムギ無細胞系でリポソームに発現させたGPCRを抗原として使用することにした。まず始めに、プロスタグランジンE受容体をモデルとしてスタートした。その結果、N末端を含む複数の領域を認識している抗体をスクリーニングすることができた。
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