研究課題/領域番号 |
24659137
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
中西 真 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40217774)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 老化 / シグナル伝達 / 発現抑制 |
研究概要 |
細胞老化は個体の加齢性変化に重要な役割を果たしているとともに、発がん防御機構の一つとして機能していることが知られている。しかしながら、いかなる分子機構により細胞老化が誘導されるのか?またどの時期に細胞周期から逸脱して恒久的に増殖を停止するのか等不明な点が多い。本研究では、細胞老化誘導の分子機構を明らかにし、最小限のDNA二重鎖切断を細胞内の非機能遺伝子領域に導入して細胞老化を誘導することで、個体における老化細胞の役割を明らかにするものである。老化誘導機構についてはFucciによる可視化技術により、p53依存的な細胞分裂期のSkipにより生じる4倍体化が重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらにこの4倍体細胞は細胞周期のG1期で恒久的に停止していること、またこの誘導にはp53依存的なAPC/C Cdh1の早期活性化と、Rbファミリータンパク質の活性化によるE2F転写因子抑制の両方が必要であった。興味深いことに、内在性のMDM2阻害化合物であるNutrin3aで正常細胞を処理するとDNA損傷非依存的に細胞老化を誘導できることを明らかにした。本年度はこの老化細胞を用いて個体内での老化細胞の機能を明らかにする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに目標としていた細胞老化誘導機構の解明、および機能的遺伝子の不全を伴わない細胞老化誘導技術の開発についてはすでに確立済みであり、研究はおおむね順調に進展していると考えている。とりわけ、内在性MDM2阻害剤であるNutrin3aによる細胞老化誘導法は、DNA損傷非存在下において可逆的にp53を活性化することができるため、いったん細胞老化が誘導されたのちにNutrin3aを除去すると内在性p53の不活性化が起こるため、個体内での老化細胞の機能解析にもっともすぐれた老化誘導系であると考えられる。このNutrin3aにより誘導された老化細胞の性質は、これまで知れられいるDNA損傷に応答した老化細胞、あるいは分裂寿命を経た老化細胞、がん遺伝子活性化誘導老化細胞等の性質と調べた限り同等であり、この点においても本年度の個体を用いた解析に非常に有用であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の当該研究において、細胞老化誘導がp53依存的なMitosis Skipにより生じた4倍体G1細胞による生じることを明らかにし、さらに内在性p53をDNA損傷非存在下において可逆的に活性化させるNutrin3aにより効率的に老化細胞が誘導されることを明らかにした。昨年度は、このNutrin3a誘導老化細胞を用いて免疫不全マウスに対して癌細胞等とともに移植することでがん細胞の増殖、悪性化に及ぼす老化細胞の影響を解析する予定である。さらに、内在的なMDM2の発現を抑制するテトラサイクリン誘導特異的shRNAシステムを構築し、トランスジェニックマウスを作製して、個体レベルで時空的に誘導可能な老化誘導モデルマウスを作製し、個体レベルにおける老化細胞の役割、とりわけ老年病発症と癌発症に対する影響を明らかにする予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主として研究の遅れのために発生した繰越金に関しては、次年度の研究、とりわけマウス個体を用いる実験を一層推進する目的で、使用する個体数を増やす等の費用に充填する予定である。
|