ヒスチジン残基のリン酸化状態にはヒスチジンのN1位、N3位にリン酸が結合する2種類の状態が存在する。それぞれのリン酸化ヒスチジンに対するアナログをペプチドに導入し、免疫を行った。N1位、N3位ヒスチジンアナログペプチド、ATPにより自己ヒスチジンリン酸化を行うヌクレオシド2リン酸キナーゼ(NDPK)と反応するクローンのスクリーニングを行った。得られたクローンは自己リン酸化NDPKのみならずATPを加えてないNDPKにも結合するものが多数みられた。更に自己リン酸化部位である118HisをPheに置換したNDPK(H118F)に対しても結合するため、これらクローンのリン酸化ヒスチジンに対する特異性が低いこと考えられた。クローンの中よりNDPK(H118F)に比べ自己リン酸化NDPKに対する反応が強いクローンについてヒスチジンリン酸化部位をそれぞれリン酸化Ser、Thr、Tyr残基に置換したペプチドを用いて特異性を検討した所、リン酸化Ser、Thrとも弱く反応することが明らかになった。これに対し、同様にアナログペプチドを免疫して作製した家兎ポリクローナ抗体ではリン酸化ヒスチジン残基に対する特異性が高く、NDPKを用いたアフィニティカラムで精製することにより他のリン酸化アミノ酸とは殆ど反応しないポリクローナル抗体を得ることができた。 また、抗リン酸化ヒスチジン抗体を用いたヒスチジンリン酸化活性の測定法の開発を行った。既知のヒスチジン残基がリン酸化されるタンパク質のリン酸化部位周辺配列を基質とし、家兎抗リン酸化ヒスチジン抗体を用い、ヒスチジン残基のリン酸化の検出を行った。コントロールに比べ明らかな差を示したことより本方法によりヒスチジンリン酸化活性の測定が可能であると考えられた。
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