研究課題
Notchシグナルにおいて、リガンド刺激にともなって生成されるNotch細胞内ドメインは、核内でDNA結合タンパク質Rbp-jおよび共役因子MamL1とともに三量体を形成し標的遺伝子を活性化する。すでにMamL1ヘテロ欠失マウスがドパミン反応性の亢進を示すことを見いだしていたが、あらたにRbp-jヘテロ欠失マウスが同様の表現型を示すことを見いだした。この表現型はヒトの統合失調症の陽性症状をmimicすると考えられているが、さらに生後10日目頃からニューロン特異的にRbp-jを欠失するマウスにおいても弱いながらこの表現型が見られたことから、発生期におけるNotchシグナルの不全が統合失調症において重要であることが示唆された。統合失調症患者400名の血液由来ゲノムDNAにおいて、RBP-J、MAML1遺伝子のexonとpromoter領域約1kbをPCR で増幅し、次世代シーケンサーによってシーケンシングを行いreference sequence上にマッピングすることで、両方の遺伝子において統合失調症特異的なSNP(single nucleotide polymorphism)それぞれ数種類を同定した。これらのSNPをRBP-J、MAML1それぞれの発現ベクターに導入して培養細胞中で発現させ、EMSA(electrophoretic mobility shift assay)を用いて、DNA結合能、三量体形成能を検討したところ、これらが低下しているものがあることを見いだした。以上から、これらのSNPが多因子遺伝性疾患である統合失調症の原因となっていることが示唆された。今後Sanger法によってこれらのSNPの存在を確認するとともに、luciferase assay等の他の方法を用いてこれらがRBP-J、MAML1それぞれの機能に与える影響をさらに検討する。
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