研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脊髄前角細胞死による運動ニューロン麻痺を引き起こす神経変性疾患で、難病に指定されている。 本研究では、近年日本各社で新規開発された抗痛風薬(キサンチン酸化還元酵素XORの阻害剤)をALSのモデルマウスに経口投与したところ、発症遅延、体重減少遅延、死亡遅延、が確認され、新規抗痛風薬は、ALS治療薬として期待され、国際特許出願(JST支援)したが米国(US8,318,792B2)および日本(特許5110536号)において本研究実施期間内に特許は受理された。XORの阻害剤効果の機構については、 XORが阻害され、その酵素が生成しうる活性酸素の生成を抑制することによりSOD1変性タンパクの凝集を抑制する可能性が、 またはXORの阻害により、活性酸素とは別のなんらかの代謝的な効果に基づく、SOD1変性タンパクの凝集の抑制の可能性が考えられる。本申請に基づき1年間の間に、その方向性を定める以下の予備的検討を行った。神経細胞の存在する正常マウスの脳組織を用い、抗XOR抗体を用いウェスタンブロット染色を試みたが、XORは検出できなかった。前核細胞での細胞組織の染色はわずかに染色されたが、検出限界と思われ、存在の可能性は少ないと考えられた。一方、活性酸素超産生のトランスジェニックマウスでは神経系になんら障害を見いだしていない。一方、網状赤血球をモデルとして、アデニンヌクレオチド、IMP、ヒポキサンチン、キサンチン、イノシン、尿酸、の濃度変化を追跡したところアデニンヌクレオチドの分解とともにヒポキサンチンの増加が認められた。また同じ系でユビキチン化蛋白質の分解をSDS-PAGEで追跡したところ時間経過とともに観察され、本系が適することが確認された。凝集タンパク質の除去に用いるATPの効果的維持の機構と結びつくという仮説に一致し、今後の研究方向を示唆した。
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