研究課題
特発性心筋症の一種である拡張型心筋症(DCM)は、心筋の収縮不全と心腔の拡張を特徴とする難治性疾患である。同疾患には発症要因に不明な点が多く、心臓移植以外には有効な治療法が存在しないという現状がある。我々は、自然発症性に拡張型心筋症様の病態を呈するEpithelial Membrane Protein 3のトランスジェニックマウス(Emp3 Tg)の解析を行い、同疾患における原因の解明を試みた。CAG-Creマウスとの交配で得られた全身性にEmp3を発現するEmp3 Tg/CAG-Cre(n=11)は23週齢までに100%が死亡し、その多くで拡張型心筋症様の症状が認められた。また一部個体では小腸炎の発症も確認された。一方、LysM CreやTie2 Creマウスとの交配で得られたマクロファージまたは血球系細胞全般においてEmp3を強制発現するConditional Emp3 Tgではこれらの表現型は全く認められなかった。しかしながら、CAG-Cre遺伝子を除いた全身性にEmp3を発現するEmp3 Tgマウスにおいても拡張型心筋症や小腸炎が発症しなくなるという予想外の結果が得られた。CAG-Creマウスが高率に無症候性の突然死をすることを考慮すると、Cre遺伝子の強制発現により誘導されていた何らかの異常をEmp3が増長することで疾患の発症につながったのではないかと考えられる。またEmp3は病原体センサーToll Like Receptor(TLR)に会合する分子であることからEmp3 TgまたはEmp3 KOマウスにおけるTLR応答の網羅的な解析を行ったが、TLR応答に顕著な変化は認められなかった。今後、CAG-Creマウスで誘導されていると予測されるERストレスなどにおけるEmp3の役割の解明が求められる。
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International Immunology
DOI:10.1093/intimm/dxt007
Science
巻: 339 ページ: 1426-1429
10.1126/science.1229159
巻: 10 ページ: 613-623
10.1093/intimm/dxs068