研究概要 |
癌の再発抑制を目指して、抗がん剤耐性のシグナル解析を行った。 今年度は抗癌剤のDocetaxelを前立腺癌細胞PC3に作用させ、Docetaxel抵抗性株PC3DRを分離した。PC3細胞はDU145細胞と異なり、すでにDocetaxelの抵抗性が高いことが分かり、50%生存を与える濃度で比較すると約2倍の増強(5nM)にすぎなかった。またDocetaxel投与なしで一カ月以上培養すると抵抗性が失われたため、たえずDocetaxelの刺激を与える必要があった。PC3DRのスフェア形成能は感受性のPC3の約2倍であった。またPC3DRではERKの活性化が強く起こっており、soft agar上でのコロニー形成能はERK inhibitorで抑制された。ERK inhibitorはPC3, PC3DRの増殖能には影響しなかった。PC3DRではc-mycの高発現が認められ、ERK inhibitorで抑制された。C-mycのsiRNAを導入すると、 PC3DRのsoft agar上でのコロニー形成能は抑制された。c-mycにより遺伝子発現が亢進する遺伝子はDU145細胞ではCXCR4であったが、PC3DRにおいてもCXCR4遺伝子の高発現が明らかになった。CXCR4のアンタゴニストであるAMD3100により抗がん剤耐性株のスフェア形成能は著しく抑制された。C-mycのsiRNAを導入した場合も同様な阻害効果が得られた。そこで去勢抵抗性前立腺癌でDocetaxel抵抗性の臨床検体を用いて、CXCR4, p-ERK1/2, c-mycの発現をimmunohistochemistryの手法で調べると、いずれも高発現していることが明らかになり、臨床においても抗がん剤により、 CXCR4/ERK1/2/c-mycのループができていることが推測された。
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