研究課題/領域番号 |
24659151
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
岡崎 拓 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 教授 (00362468)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アレルギー / 免疫学 / ゲノム / モデル動物 / 免疫補助受容体 |
研究概要 |
国民の3分の1が何らかのアレルギー疾患に罹患していると言われているが、効果的な根治療法は無く、対症療法による治療が中心となっている。根治療法の開発には、疾患の発症メカニズムを理解することが必要であるが、アレルギー患者の免疫システムが、健常人ではほとんど反応しない抗原に対して過剰な免疫応答を示す原因はほとんど分かっていない。本研究では、アトピー性皮膚炎を自然発症するモデルマウスを用いて、疾患発症における免疫抑制受容体の機能を解明するとともに、アレルギー疾患の発症制御にかかわる遺伝子を連鎖解析により同定することを目的とする。 我々はこれまでに、PD-1という免疫抑制受容体を欠損させたマウスが系統により異なる種類の自己免疫疾患を自然発症することを見出すとともに、PD-1欠損マウスを用いた連鎖解析により様々な自己免疫疾患感受性遺伝子座を同定してきた。また、LAG-3という免疫抑制受容体が自己免疫疾患の発症制御においてPD-1と協調的に働くことを明らかとした。本研究ではまず、自己免疫応答とアレルギー応答には類似点が多いことから、PD-1やLAG-3がアレルギーの制御にも関与していると推測し、これらの欠損マウスを、アトピー性皮膚炎モデルマウスであるNCマウスに戻し交配し、アトピー性皮膚炎の発症に与える影響を観察した。N10世代でPD-1ホモ欠損マウスを解析したところ、一部のマウスがSPF環境下でも激しいアトピー性皮膚炎を発症したが、コロニー及び世代間でその発症頻度及び症状に大きな差が認められた。戻し交配により染色体の由来系統を置換していることから、症状が安定しないのは、残存する親系統由来染色体の影響と考え、追加で戻し交配を開始した。LAG-3欠損マウスについても、同様に激しい皮膚炎を発症する個体が散見されたが、コロニー及び世代間で症状が安定しなかったため、追加で戻し交配を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NC系統に戻し交配したPD-1欠損マウス及びLAG-3欠損マウスについて、期待される症状(アトピー性皮膚炎)の頻度及び程度が、コロニー及び世代間で大きく異なったことから、戻し交配を追加で行う必要および微生物環境による影響を検討する必要が生じた。PD-1欠損マウスでは、戻し交配を10回行ったマウスを用いたが、理論的には99.9%の染色体が置換されていることとなる。戻し交配に要する時間を考えると(1年間で4~5回)、10回以上の戻し交配を事前に計画することは、現実的では無いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
期待される症状(アトピー性皮膚炎)の頻度及び程度が安定しない理由として、残存する親系統由来染色体の影響及び常在細菌叢の影響が考えられる。そこで、戻し交配の回数を2~3回追加して、残存する親系統由来染色体を減らすとともに、TLRリガンド等を投与することにより、特定の感染免疫応答を人為的に誘導して検討する。また、安定的にアトピー性皮膚炎を発症させることに成功すれば、その条件下で連鎖解析を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の通り、アトピー性皮膚炎の頻度及び症状が安定しなかったため、戻し交配を追加することとした。これにより、一部の実験を戻し交配追加後に実施することとしたため、次年度に使用する予定の研究費が生じた。また、昨年度の解析結果から、特定の感染免疫応答を人為的に誘導した条件下で検討することが必要であることが判明した。以上の状況から、戻し交配を追加したマウスを用いた解析、TLRリガンド投与実験および連鎖解析に用いるマウスの飼育費用として、約120万円を予定している。また、これらのマウスを免疫学的に解析するための抗体等の購入に必要な費用として約40万円、病理学的に解析するための試薬の購入に必要な費用として約30万円、連鎖解析を行うためのSNP検出試薬等の購入に必要な費用として約60万円を予定している。
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