国民の3分の1が何らかのアレルギー疾患に罹患していると言われているが、効果的な根治療法は無く、対症療法による治療が中心となっている。根治療法の開発には、疾患の発症メカニズムを理解することが必要であるが、アレルギー患者の免疫システムが、健常人ではほとんど反応しない抗原に対して過剰な免疫応答を示す原因はほとんど分かっていない。本研究では、アトピー性皮膚炎を自然発症するモデルマウスを用いて、アレルギー疾患発症における免疫抑制受容体の機能を解明するとともに、免疫抑制受容体と協調的にアレルギー疾患の発症を制御する遺伝子を同定し、アレルギー疾患の発症制御機構の全貌を解明することを目的とする。 我々はこれまでに、PD-1およびLAG-3という免疫抑制受容体が自己免疫に対する不適切な免疫応答を制御することにより、自己免疫疾患の発症を抑制していることを明らかとしてきた。本研究ではまず、自己免疫応答とアレルギー応答には類似点が多いことから、PD-1やLAG-3がアレルギーの制御にも関与していると推測し、これらの欠損マウスを、アトピー性皮膚炎モデルマウスであるNCマウスに戻し交配し、アトピー性皮膚炎の発症に与える影響を観察した。実験開始後早期に得られた複数のNC-PD-1欠損マウスがSPF環境下でも激しいアトピー性皮膚炎を発症したことから、マウスの数を増やすとともに戻し交配世代数を増やして解析したところ、野生型NCマウスおよびNC-PD-1欠損マウス共に、コロニー及び世代間でその発症頻度および程度が大きく異なり、PD-1欠損による有意な影響とは結論付けられなかった。LAG-3欠損マウスについても、皮膚炎を発症する個体が実験開始後早期には複数得られたが、コロニー及び世代間で症状が安定せず、LAG-3欠損による有意な影響とは結論付けられなかった。今後は、これらの以外の免疫抑制受容体について、検討する予定である。
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