研究課題/領域番号 |
24659153
|
研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
辻本 雅文 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (00281668)
|
研究分担者 |
服部 明 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50300893)
後藤 芳邦 帝京平成大学, 薬学部, 助教 (90455345)
|
キーワード | 小胞体アミノペプチダーゼ / 高血圧症 / NO産生 / マクロファージ |
研究概要 |
各種のSNP解析により、ERAP1が高血圧症、強直性脊椎炎、骨粗鬆症などの病態に関与することが示唆されている。私たちはERAP1と高血圧症との相関性に着目し、本研究においてERAP1の血圧調節および動脈硬化症への関与の可能性について高血圧症、強直性脊椎炎、骨粗鬆症などの病態に関与することが示唆されているこれまでに私たちはマクロファージのLPS処理に伴いERAP1が分泌され、その活性化に寄与することを報告してきた。本研究においてさらに検討を進めた結果、ERAP1は活性化マクロファージのNO産生を亢進することを見出した。この現象はERAP1が血圧調節さらには動脈硬化症の発症に関与することを示唆することから、本研究課題に合致したものと考えられ、今年度はその詳細について検討した。 活性化RAW264.7細胞のNO産生能は培養液中のアルギニン量に依存するが、通常のアルギニン血清濃度では最大産生量は得られないことが示された。したがって最大産生量を達成するためには何らかの形でアルギニンが供給されなければならない。この時アルギニンの代わりにアンジオテンシンIIIを加えておくと最大量のNO産生が達成される。このことはNO産生に必要なアルギニンがアンジオテンシンIIIのN-端より供給されていることを示唆しており、実際アミノペプチダーゼ阻害剤であるアマスタチンを加えるとNO産生量が減少することが見られた。さらにERAP1をノックダウンしたRAW264.7細胞およびERAP1ノックアウトマウスから調製したマクロファージではそれぞれの野生型に比べ、NO産生量の低下か認められ、ERAP1を添加することでNO産生量の回復が確認された。 以上の結果よりERAP1は種々の感染刺激によりマクロファージ(および血管内皮細胞)から分泌され、NO産生に寄与することで血圧の調節に関与し得ることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究等により、私たちはERAP1が種々の感染性(炎症性)刺激により細胞外に分泌され、マクロファージの活性化を誘導するとともに、NO産生の亢進に寄与することで血圧調節に関与しうる可能性を示した。これらの成果は、ERAP1が抗原ペプチドのプロセシングや血管新生以外にも重要な機能を有していることを初めて示した意義深いものであり、今後さらに検討していく価値があるものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は本研究の過程で作成したERAP1ノックアウトマウスを用いて、個体レベルでERAP1の血圧調節への関与の有無を検討していきたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題で明らかにしたERAP1のNO産生亢進作用に関しては、その詳細を論文化するまでには至っていない。論文化にはもう少々時間が必要であり、そのため本ファンドの繰り越しが承認されている。 ERAP1のNO産生亢進活性に関する詳細を明らかにするために必要な、消耗品費および論文掲載費に繰り越し金を充当する予定である。
|