研究概要 |
本研究は,相同染色体上の遺伝子領域間三次元核内配置がエピジェネティクなメカニズムとして遺伝子発現に影響する,あるいは遺伝子発現の違いが核内配置に影響する可能性を示唆しているという仮説の検証をめざしたものである. 遺伝子の片親性発現が疾患発症に影響していることが知られている,15番染色体上のSNRPNとUBE3A遺伝子の核内三次元相対距離が相同染色体間で差がある,という仮説を示唆する結果を正常同一個人由来の3細胞腫において得て(Kawamura et al., Chromosome Res. 2012),さらに距離の違いと発現の関係を直接検証するため,SNRPN遺伝子の発現を確認しつつSNRPN~UBE3A遺伝子領域間の三次元相対間距離を連続して計測する解析法の確立をめざした. 正常,母性片親性ダイソミーのPrader-Willi症候群患者,父性片親性ダイソミーのAngelman症候群患者の培養細胞を用いたRNA-FISH解析の結果,父性発現を示すことが知られているSNRPN遺伝子のRNAシグナル数は,正常が1,Prader-Willi症候群患者が0,Angelman症候群患者が2,という予想されたパターンの割合が多かったものの,他パターンもそれぞれ一定の割合観察された.細胞周期による影響を考え,細胞周期が影響しない正常末梢血単核球細胞を用いたRNA-FISH解析も試みたが同様の結果であった. RNA-FISH解析のシグナル観察で気づいたことに,通常のDNA-FISH法と異なり,検出されるシグナルの大きさが様々という現象があった.それは発現の度合いと相関している可能性があり,最近注目されている“発現の揺らぎ”の概念を示唆しているとも考えられた. めざしていたRNA-DNA連続3D-FISH解析法を本研究期間内に確立することはできなかったが,さらなる工夫を加え引き続き取り組んでいる.
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