研究課題/領域番号 |
24659160
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中沼 安二 金沢大学, 医学系, 教授 (10115256)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 付属腺 / 胆道腫瘍 / 膵腫瘍 / 膵外分泌腺 |
研究概要 |
*IgG4関連硬化性胆管炎は、高率に自己免疫性膵炎を合併することが知られており、さらに小数例では全身性のIgG4関連疾患を合併する症例が知られている。病理学的には、IgG4関連硬化性胆管炎で線維化とIgG4陽性形質細胞の浸潤が特徴であり、制御性T細胞の増殖が重要である。しかし、胆管癌でも線維化やIgG4陽性形質細胞の浸潤がみられる(IgG4組織反応)ことが知られている。そして、これら胆管癌の症例でも血中のIgG4値が高値を示す症例があり、鑑別診断上、大きな問題となっている。 *本研究では、胆管癌症例を収集し、IgG4組織反応の頻度とその機序と病理学的、臨床的意義を明らかにすることが目的である。 *北陸地方を中心に、IgG4硬化性胆管炎の7手術例を収集した。また、胆管癌の手術症例を68例既に収集し、さらに収集を予定している。これらの症例を用い、主に免疫組織化学的に、IgG4陽性形質細胞、細胞障害性T細胞のマーカーとしてCD8の免疫染色を行った。また、制御性T細胞のマーカーとして、Fox3の発現を検討した。 *胆管癌症例の術後の生存を、臨床医と伴に検討し、IgG4陽性細胞の浸潤、CD8陽性T細胞の浸潤程度と検討し、腫瘍免疫との関連性を検討した。 *胆管癌の培養株を用い、制御性T細胞の機能マーカーであるFoxp3
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
*IgG4組織反応は、検討した68例の胆管癌の中で、38%の症例にみられた。そして、IgG4陽性の形質細胞浸潤を伴う症例では、細胞傷害性のCD8+陽性T細胞が少ない傾向にあった。逆に、IgG4陽性形質細胞の少ない例、あるいは陰性の症例ではCD8+陽性T細胞が多数みられた。また、IgG4陽性の形質細胞が多数浸潤する症例では、制御性T細胞のマーカーであるFoxp3陽性のリンパ球が浸潤する傾向があった。 *これらの所見から、IgG4陽性形質細胞の浸潤を伴う症例では、腫瘍免疫が低下していることが示唆された。IgG4陽性形質細胞を多数認める胆管癌症例では、患者の術後の予後がIgG4陽性形質細胞を認めない症例に較べ、不良であった。 *胆管癌の培養株では、IL10を産生する例があった。IL10 は、制御性T細胞から分泌され、B細胞からIgG4陽性形質細胞の分化に関連するサイトカインであり、胆管癌がこのサイトカインを分泌することが明らかになった。このことは、胆管癌にみられるIgG4組織反応は胆管癌が産生するIL10が深く関係することが示唆された。 *IgG4陽性硬化性胆管炎で、胆管癌の前癌病変であるbiliary intraepithelial neoplasm(BilIIN)がしばしばみらることを明らかにした。特に、IgG4陽性形質細胞の多数浸潤部でこれらの異型病変がみられた。IgG4陽性形質細胞を多数認める胆管癌では、周囲の胆管でも同様の変化が観察される。これらの症例の一部は、IgG4関連硬化性胆管炎から胆管癌が発生している可能性が示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
*IgG4関連硬化性胆管炎とIgG4組織反応を伴う胆管癌との鑑別を進める。全国の施設から、IgG4関連硬化性胆管炎を収集する。また、金沢大学を中心に、胆管癌症例を収集し、IgG4陽性形質細胞浸潤例を解析し、その特性を明らかにし、IgG4関連硬化性胆管炎との鑑別方法を病理学的に明らかにする。 *胆管癌の培養株を用い、IgG4陽性形質細胞浸潤を伴う胆管癌での病態を明らかにする。特に、培養胆管癌でのFox3pの発現を見出しているが、その機序を分子病理学的および遺伝子学的に検討する。 *IgG4陽性硬化性胆管炎で、胆管癌の前癌病変であるbiliary intraepithelial neoplasm(BilIIN)がしばしばみられる。制御性T細胞およびCD8陽性リンパ球とこれらの前癌病変との関連性を検討し、IgG4陽性硬化性胆管炎と前癌病変および胆管癌発生との関連性を検討する。 *最近、IgG4関連疾患の成因の1つとして、悪性腫瘍が背景にあり、この腫瘍に関連した現象ではないかとの報告がある(Shiokawa et al. Am J Gastroenterol 2013)。胆管癌にかんしても、胆管癌がIgG4関連硬化性疾患の発生に関連する可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として使用する:標本作製費用、免疫染色の抗体や染色試薬、および分子病理学的な試薬に使用する。
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