研究課題/領域番号 |
24659162
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
濱田 吉之輔 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10362683)
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研究分担者 |
松浦 成昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70190402)
河口 直正 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70224748)
森 誠司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90467506)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分子病理 |
研究概要 |
本研究では接着分子とLINC complexとの相互作用が細胞機能に与える影響を明らかにすることを目的とした。まず24年度は乳癌でLINC complexタンパク質の発現がどのように変化しているのか解析した。 LINC complexタンパク質は核と細胞骨格を繋ぎ、核の形態や位置をコントロールする役割を果たしているとされているため、核・細胞質比(N/C比)の増大や核形不整が認められる癌細胞ではLINC complexタンパク質の発現に変化が見られるのではないかと考え、乳癌の細胞レベル・組織レベルでの発現を検討した。まずLINC complexタンパク質のmRNAレベルでの発現をRT-PCRにより検討した結果、今回使用した細胞株全てに共通して、SUN2とnesprin2の発現低下が認められた。 続いて、蛍光染色によりタンパク質レベルの発現を調べた。mRNAレベルでの発現が強かったlaminA/CとSUN1に関しては、タンパク質レベルでも発現が強く認められた。一方mRNAレベルで発現が低下していたSUN2とnesprin2では、細胞株によって発現パターンに差が見られた。MCF7のnesprin2、MDA-MB-231のnesprin2、SK-BR-3のSUN2とnesprin2はmRNAレベルでは発現していてもタンパク質レベルで発現が低下しており、翻訳の過程に異常が生じている、または合成されたタンパク質が何らかのメカニズムによって早期に分解されている可能性が考えられる。またSUN2とnesprin2では発現あり(+)とした細胞株でも発現量が少なかったことから、蛍光染色では抗体の検出感度以下でタンパク質の発現が認められなかった可能性も考えられる。そして、MDA-MB-231のSUN2に関してはmRNAレベルで発現が低下しているにも関わらずタンパク質レベルでは発現が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MDA-MB-231のSUN2に関してはmRNAレベルで発現が低下しているにも関わらずタンパク質レベルでは発現が認められた。この原因について、プライマーと抗体の検出感度の違いが考えられる他、プライマーの認識部位と抗体の認識部位が異なることから、次のような仮説を立てた。 転写が行われる時、スプライシングの段階で異常が生じ、正常とは異なる配列のmRNAが合成されたとする。正常mRNAには存在するが異常mRNAには存在しない塩基配列がプライマーの認識部位になっていた場合、RT-PCRの結果は陰性(-)となる。しかし異常mRNAにもタンパク質をコードする領域は含まれており、翻訳が行われる。そしてタンパク質が合成されるが、そのタンパク質が抗体の認識部位を含んでいれば、蛍光染色の結果は陽性(+)となる。この仮説を検討するため、今後、プライマーと抗体の認識部位を同じにして、再度RT-PCRと蛍光染色を行う必要がある。 しかし、細胞実験の結果、乳癌細胞ではLINC complexタンパク質のうちSUN2とnesprin2の発現が低下傾向にあることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、組織レベルでの検討を行うために免疫染色を行い、非癌部である乳管と比較して癌細胞でLINC complexタンパク質がどのように発現しているかを調べる。 癌細胞の染色性についての評価であるが、最初に染色性の強さによって2つのscoreに分けた後、最終的に発現の低下/亢進によって2つのgroupに分類し評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執 行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通 りの計画を進めていく。
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