研究概要 |
非翻訳RNA(ncRNA)をコードする超保存領域 (transcribed-ultraconserved regions: T-UCRs)について、消化管癌においての発現と役割を明らかにし、それを標的とした診断・治療への展開を目的として研究を行い、以下のとおり研究を実施した。 少なくとも481個存在するT-UCRの内,代表的な28種類(UCR1, 73, 118+A, 158+A, 181+A, 184, 234+A, 241+A, 244, 249, 252+A, 261, 282, 291+1, 317, 327, 345, 346, 349, 359, 366, 385, 389, 390, 416+A, 420+A, 427+A, 454+A)のUCRについて、胃癌細胞株(KN-45, MKN-74, HSC-57)と正常胃粘膜組織における発現を定量的RT-PCRで検討した。胃癌では416+A, 420+Aの発現が亢進し、118+A, 158+Aなど多くのUCRの発現は低下していた。416+Aの発現上昇は、胃癌臨床検体でも確認された。一方、胃癌細胞株を脱メチル化剤5-Aza-dCで処理したところ、118+A, 158+A, 251, 291+1の4つの領域で、濃度依存性の発現回復を認めた。158+Aの上流にCGリッチな領域が存在していることが確認できたので、バイサルファイトシークエンスによる詳細なメチル化解析を行った結果、胃癌細胞では高率にメチル化されており、正常胃組織ではメチル化頻度は低かった。胃癌組織における158+Aの発現を同一症例の腫瘍部と非腫瘍部で比較したところ、多くの症例で腫瘍部で発現が低かった。これらUCRの発現と臨床病理学的事項や治療効果の情報との比較解析から、T-UCRsの発現プロファイルによる悪性度診断、治療効果予測診断の可能性が示唆された。
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