研究課題
挑戦的萌芽研究
1. 細胞外Hsp90 (exHsp90)レセプターのクローニングマクロファージや樹状細胞を含む抗原提示細胞が細胞外の熱ショック蛋白質HSPを結合・取り込むことにより、自然免疫を活性化し、無菌性炎症を惹起することが知られている。特にexHsp90 は樹状細胞への結合・取り込み効率が高く、さらに抗原提示を促進して獲得免疫の活性化を増強する。本研究では、無菌性炎症に関わるヒト樹状細胞状のHsp90レセプターを同定することで、自然免疫活性・無菌性炎症惹起の分子メカニズムを解明する。平成24年度はGM-CSFを用いてヒト末梢血単球から誘導した樹状細胞からpoly A (+) RNAを精製したのち、RT-PCRを行い、cDNAを合成した。cDNAを精製後、λZAPIIベクターにライゲーションした。これをXL-1 Blueにtransformationし、200万pfuのcDNAライブラリーを作成した。このcDNAライブラリーをcos7細胞に一過性発現させ、ビオチン化Hsp90との結合性をフローサイトメーターにてスクリーニングした。cDNAを50万クローンスクリーニングしたところ、以下の候補遺伝子を同定した。すなわち、VDAC2, Timp3, β-tubulin, lamin B, Chicitase 3であった。しかし、細胞表面分子は含まれておらず、レセプターの可能性は低いと考えられた。そのため、平成25年度においては、レトロウイルスライブラリーとパンニング法を用いて、Hsp90レセプター発現クローニングを行う。2.レセプター媒介性エンドサイトーシスの共焦点顕微鏡による観察Alexa488で標識したヒトHsp90を用いて、ヒトの樹状細胞によるエンドサイトーシスと細胞内局在を観察した。取り込まれたexHsp90は初期エンドソームに特異的にかつ長時間貯留(~3時間)を示した。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の計画における1. 細胞外Hsp90 (exHsp90)レセプターのクローニングについては、計画にあるcos細胞を用いた発現クローニングを行い得た。また2. レセプター媒介性エンドサイトーシスの共焦点顕微鏡による観察を行い、exHsp90の特徴的な初期エンドソームへの標的と長時間の貯留を示すことができた。以上のように、現在の達成度としては、おおむね順調に進展しているものと考えている。
平成25年度においては、もう1つのストラテジーである、マウス未熟樹状細胞から作成したレトロウイルスライブラリーを用いて、パンニング法により、Hsp90レセプター発現クローニングを精力的に行い、レセプターをコードする遺伝子を同定する。具体的には、これらのcDNAライブラリーをマウスB細胞株P3U1の導入し、Hsp90を固層化したプレートを用いてパンニングを行い、結合したP3U1を回収し、cDNAライブラリー由来遺伝子をPCRを用いて増幅する。レセプターであるかの確認は、同定した遺伝子を哺乳類発現ベクターpcDNA3.1に組換え、293T細胞に発現させ、ビオチン化Hsp90の結合を検討することによって行う。同時にこの遺伝子のヒト樹状細胞における発現と相同性を確認し、ヒト樹状細胞においてもexHsp90のレセプターとして機能しているか、検討する。その後、このレセプターに対するリコンビナント蛋白質を作成し、マウスに免疫することにより抗Hsp90受容体抗体を作成する。この抗体を用いて、Hsp90のエンドサイトーシス阻害効果を確認する。またAlexa488ラベルHsp90を樹状細胞にパルスし、Hsp90-Hsp90レセプター複合体の動態を蛍光顕微鏡を用いて検討する。また平成26年度は、exHsp90をマウスに投与し、無菌性炎症モデルを作成し、同定したHsp90レセプターに対する抗体による治療効果を検討する。
引き続き樹状細胞、大腸菌などの細胞培養に用いるサイトカイン、培養液、培養器具、遺伝子合成費用、Hsp90精製に用いる試薬類、免疫用のマウス購入費に必要とする。平成26年度には、樹状細胞などの培養に関わる費用、Hsp90精製に関わる試薬、培養器具等、マウス購入費に使用を計画している。
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