研究課題
1. 細胞外Hsp90 (exHsp90) レセプターのクローニング平成25年度は、マウス未熟樹状細胞細胞からcDNAライブラリーを調整し、レトロウイルスベクターpLIBにクローニングした。約10万クローンのライブラリーをPLAT-E細胞に導入し、その48時間後の培養上清を回収し、マウス形質細胞腫であるP3U1に感染させた。これをHsp90をコーティングしたプレートに添加し、パニング法を用いて、付着細胞由来のコロニーを10個以上得た。この細胞から、cDNAライブラリー由来の遺伝子をPCRを用いて増幅し、シークエンスを行った。その結果、Endoplasmic reticulum oxidoreduction 1-α (ERO1-α)を同定した。このERO1-αは小胞体局在蛋白質であることが知られているが、小胞体局在シグナルを持たない分子であり、細胞膜あるいは分泌されうる可能性が考えられた。そこで、受容体として機能するか、まず細胞表面上の発現の有無を確認した。ERO1-αの組換え蛋白質を作製し、マウスに免疫し、単クローン抗体を作製した。この抗体を用いて、樹状細胞表面での発現を検討すると、確かに細胞表面での発現を認めた。ERO1-αは、マウスとヒトのアミノ酸レベルで、79.8 %の高い相同性を持つため、本抗体を用いて、ヒト樹状細胞においても受容体として機能しているか、検討する予定である。2. exHsp90のレセプター媒介性エンドサイトーシスAlexa488で、蛍光色素標識したHsp90をマウス樹状細胞に添加して、その細胞内局在を時空間的に解析した。その結果、exHsp90は、初期エンドソームに貯留後、時間経過とともにエンドソームを脱出し、プロテアソームと共局在することが示された。抗Hsp90抗体を用いた結果から、exHsp90のエンドソーム脱出には、内在性のHsp90が重要な役割を果たしていることが示された。
2: おおむね順調に進展している
上で記したごとく、本研究によりHsp90の樹状細胞受容体候補Endoplasmic reticulum oxidoreduction 1-α (ERO1-α)を同定することが出来た。現在、単クローン抗体を作製してさらに詳細に検討を行っている。これらの研究成果によりHsp90の慢性炎症機構における役割がより明瞭に見えてくるものと期待しているところである。以上のように、本研究における現在までの達成度はおおむね計画通りであると考える。
今後、この抗体を用いて、マウスおよびヒトのHsp90の樹状細胞への結合および取り込み抑制およびERO1-αを介する樹状細胞内取り込み後の細胞内局在を検討する。これらを通し、Hsp90の炎症機構における役割の詳細、また炎症性病態、病変での役割、あるいはこの機構を利用した炎症性疾患への治療創薬への研究進展などへの方向性が見えてくると思われる。
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