研究課題/領域番号 |
24659167
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
古川 徹 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (30282122)
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キーワード | 膵臓がん / シグナル伝達 / GPCR / MAPK / PI3K / 遺伝子発現 / 分子標的 / GNAS |
研究概要 |
膵がん細胞におけるGPCR活性化の影響を解析するため、膵腫瘍において認められたG蛋白αをコードする遺伝子であるGNASの活性化型変異ベクターを作成し、膵がん細胞に導入してその表現型を解析した。変異GNAS導入によりcyclic AMPの上昇と粘液遺伝子の発現変化を認めたが細胞増殖の亢進はおこらず,一部では増殖抑制効果が認められた。次世代シーケンサーを使用したSAGE法で網羅的な遺伝子発現を解析した所,MAPK経路関連遺伝子,PI3K経路関連遺伝子の発現変化を認めた。膵がん細胞におけるGPCR経路とMAPK経路,PI3K経路との関連を明らかにするため変異GNAS導入膵がん細胞をMAPK抑制剤,PI3K抑制剤で処理し,その表現型を解析した所、GPCR経路へのフィードバック抑制効果が一部の細胞で認められた。しかし、これらの相互作用は細胞株により異なる反応を示し,株により,MAPK依存性またはGPCR依存性の何れかのパターンに分類されることが明らかとなった。このことは、膵臓がんの発生進展過程における信号伝達経路活性化とそれへの依存性は個々のがんにより異なることを示唆する。以上の結果は膵臓がんにおけるGPCR活性化の効果を知る上での新規かつ重要な知見であり,論文発表した(Komatsu et al. PLoS ONE 9(2): e87875, 2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵臓がんにおけるGPCR活性化の効果をin vitroでの詳細な解析により明らかにし、論文発表に至った。
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今後の研究の推進方策 |
GPCR活性化によって細胞増殖抑制効果を示す膵がん細胞があり、そのような細胞ではGPCR活性化がMAPK活性を干渉していることがこれまでの研究で示された。GPCR経路,MAPK経路干渉機構をより詳細に解析することにより,膵臓がん治療のための新たな分子標的を同定する。
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