研究課題/領域番号 |
24659168
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
宇山 太郎 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 研究員 (60232914)
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研究分担者 |
梅澤 明弘 独立行政法人国立成育医療研究センター, 再生医療センター, センター長 (70213486)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医学 / 発生・分化 / 細胞・組織 / 寿命延長 / ヒトパピローマウイルス |
研究概要 |
本研究はヒト骨髄間葉系幹細胞の寿命を腫瘍化させずに延長させる実験系を用いた。目的の達成にはヒトパピローマウイルスの系を用いた。ヒトパピローマウイルスの部分構造遺伝子であるE6はテロメラーゼを活性化し、p53を分解誘導することによりアポトーシス、G1 arrestを回避することができる。ヒトパピローマウイルスのE7はRBファミリー (RB, p107, p130) と結合して、p16 Ink4a増加に伴ってリン酸化が阻害されたRbをリン酸化してE2F放出を可能にして細胞を不死化した。具体的にはヒト骨髄間葉系幹細胞にヒトパピローマウイルスのE6、E7、ポリコウム遺伝子群のBmi-1およびhTERTのコンストラクトをレトロウイルスにより遺伝子導入し、寿命の延長を行った。細胞寿命の制御に関わる経路として大きく二つが考えられており、一つはテロメアの短縮に伴い、ataxia telangiectasia mutated (ATM) が活性化され、それに伴ってATMの下流に位置する癌抑制遺伝子としてよく知られているp53、さらに下流のp21も活性化され、さらにp21はサイクリンDを不活性化して、RBのリン酸化(活性化)が阻害されて、細胞は増殖しなくなることが古くから知られている。これは細胞寿命制御に関わる一つの経路として「テロメア/p53経路」と呼ばれている。もう一つはINK4ファミリーの一つであるp16タンパクの蓄積によりサイクリンDが不活性化され、上で述べたテロメア/p53経路同様、RBのリン酸化(活性化)が阻害されて、細胞は増殖しなくなることが近年明らかにされており、これは「p16/RB経路」と細胞寿命制御に関わるもう一つの経路として重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞培養や動物実験は当初の計画どおりに推移している。寿命延長メカニズムの探索は、GeneChip等による膨大なデータの蓄積が行われており、計画どおりの進展がなされている.
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今後の研究の推進方策 |
種々の組織由来の間葉系幹細胞を用いて細胞寿命延長の機構の詳細を明らかにしていくが、その中で臨床応用、細胞治療に十分な量の安全で品質の均質な細胞提供に向けてRNA干渉法、PTDタンパクによる細胞延命増殖の方法、さらに細胞をできるだけ正常なまま寿命延長する方法を開発する。将来的には遺伝子導入を伴わない方法の確立も視野に入れている。これは細胞を培養というストレスに打ち勝って、細胞が定常状態すなわちDNA複製時においてもテロメアの長さを維持し、かつ遺伝子発現も定常化したままで細胞分裂を続けさせることを意味している。そのためにはテロメア短縮を除いたストレスの本態を解明し、ストレスフリーの状態を作り出すことも本研究計画に含まれる。すなわちその目標達成のため細胞培養時に用いる培養液の検討も計画に含めている。 また、遺伝子導入により染色体を傷付けることなく自己の各臓器の体性幹細胞を無限増殖させることを目標とする。これらは、理論的に可能であり、且つ再生医療にとって最も理想的である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養用試薬・器具、遺伝子解析用試薬を購入する。
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