OGFOD1はリボソームタンパク質のプロリン残基を水酸化する機能をもつことが報告されたが、その機能本態および癌での役割はいまだ解明されていない。私たちは、発生母地の異なる多系統の腫瘍細胞株においてOGFOD1発現量の増減いずれかの方向へのシフトが劇的な細胞死を誘導すること、かつ細胞死誘導が増強によるか抑制によるかが癌腫で分かれるという特徴を見出している。そこで本研究では、OGFOD1遺伝子の発現量の正負の調節によりヒト悪性腫瘍において細胞死が惹起される分子機序を明らかにすることを目的とする。 患者腫瘍組織を用いた免疫組織化学により、OGFOD1は扁平上皮癌での高発現が認められとくに食道癌での発現が高いことから食道癌細胞株を用いてOGFOD1の発現および機能解析を行った。OGFOD1発現の抑制は、細胞周期の停止(G1停止)と増殖抑制を招くとともにがん抑制遺伝子であるp21Cip1遺伝子の上昇を誘導した。また、食道癌以外のいくつかのがん細胞株でも同様の現象が認められる。一方で、血清飢餓状態やCDK阻害剤による細胞培養ではOGFOD1の発現が低下すること判明した。このようにOGFOD1発現調節は細胞周期に依存し、また細胞周期を制御する機能を持つことが推察され癌の増殖に必須な分子であると考えられる。現在、食道癌を中心にOGFOD1の分子機序の解明に取り組んでいるもののin vivo解析およびOGFOD1をベースとする制がんペプチドの開発には至っていない。癌の種類によるOGFOD1の二面性の機能を具体的に明らかにし、今後のin vivo解析につなげたいと考えている。
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