免疫細胞(T細胞)のアナジー(無応答)化は、炎症反応修飾に寄与する機構の一つとして極めて重要である。しかし、その制御に関する細胞内分子機構については未だ詳細が明らかとなっていない。本研究は、近年細胞機能制御において重要な役割を担うことが報告された長鎖非翻訳RNA(Long non-coding RNA: lncRNA)に注目し、アナジー制御におけるその役割を明らかにすることを目的とし検討を加える。 Th1細胞を対象とし、イオノマイシン刺激にてアナジー誘導を試みた。アナジー化の指標として、①増殖の抑制、②IFN-γの産生抑制、③アナジー制御因子Cbl-bの発現上昇をモニタリングし、前記3条件を満たす状態をアナジーと定義した。以上のアナジー状態において、発現が変動するlncRNAを確認するため、DNAマイクロアレイ(Agilent社SurePrintG3: lncRNA対応プローブ搭載)を用いて発現変動を確認した。なお、アナジー誘導刺激の強弱、誘導後の時間的変動を確認するために、4種類のイオノマイシン濃度の利用および経時的なサンプリングを実施し、試料となるRNAを抽出した。 DNAマイクロアレイ解析の結果、イオノマイシン刺激によって上昇するlncRNAを55種類同定した。イオノマイシンによってのみ変動を生じるlncRNAを選択するため、PMA刺激・T細胞受容体刺激による変動も定量PCRにて確認した結果、lncRNA27種類が選択された。これらのlncRNAのうち、特に大きな変動を示したlncRNA3種類に対し、レンチウイルスベクターを用いたshRNAの導入によるノックダウン系を構築し、アナジーへの関与を検証した。shRNAによるlncRNAの発現抑制は確認されたものの、アナジー状況への関与については認められていない。lncRNAのターゲット範囲の拡大が必要と考えている。
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