近年注目されている分子標的療法のひとつに抗体療法がある。標的分子の探索とそれに対する抗体療法の検討には、通常マウスモデルが利用されるが、抗マウス抗体と抗ヒト抗体のエピトープやFcの差異などにより、マウスで観察した治療効果が必ずしもヒトで認められるとは限らない。最近開発されたヒト化マウスは、免疫不全マウス体内でヒトの造血系を再構築したマウスで、抗ヒト抗体の効果を検討するのに極めて有用である。しかし、造血系だけがヒト化されているため、急性GVHDなどの臓器障害に対する治療効果については検討できない。本研究では、急性GVHDの新規抗体療法を検討するために、新たに遺伝子を導入したヒト化マウスを作製し、ヒトの急性GVHDの免疫応答を再現出来る系を確立し、さらに、この系を利用して、私達がマウスの系で急性GVHD病態との関連を見いだしたDNAM-1に対する抗体療法の治療効果を検討することを目的とし、ヒトDNMA-1リガンドトランスジェニック超免疫不全マウスの作製と抗ヒトDNAM-1抗体の作製を行った。 ヒトDNMA-1リガンドトランスジェニック超免疫不全マウスの作製は、ヒトDNMA-1リガンドであるヒトCD155トランスジェニックマウスをNODに戻し交配し、超免疫不全NOGマウスと交配中である。 抗ヒトDNAM-1抗体については、昨年度までに得られた抗ヒトDNAM-1抗体産生ハイブリドーマに加え、新たに38クローンの抗ヒトDNAM-1抗体産生ハイブリドーマを樹立した。これらの抗体のV領域をシーケンス解析し、既存の抗ヒトDNAM-1抗体とは異なるエピトープを認識していることを確認した。
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