研究課題
炎症性サイトカイン受容体の糖鎖修飾を標的とした抗炎症治療の原理・応用法を研究し、将来の臨床応用を目指す目的で実験を行った。その結果、2-Deoxy-D-glucose (2-DG)処理により、培養細胞ではIL-6やTNF-α受容体の糖鎖修飾が阻害され、その結果としてリガンドの結合が低下することを見いだした。実際に糖鎖修飾阻害剤Tunicamycinでも同様の抑制が見られた。更に、生体内での効果を検討し、2-DGをマウスに投与した後にIL-6やTNF-αを注射してもマウス組織でのこれらのサイトカインの誘導遺伝子の発現が抑制された。生体内のマクロファージでのこれら受容体の糖鎖修飾も抑制されており、このことが炎症性サイトカインのシグナルの抑制につながると考えられた。そこで、炎症性腸疾患モデル、敗血症モデル、関節リウマチモデルでの効果を検討したが、いずれのモデル系でも2-DG投与により明らかな疾患の軽減を認めた。このうち、関節炎モデル(SKGマウスでのラミナリン誘発関節炎)では、飲水中に加える事で発症が抑制された。これらの効果が炎症性サイトカイン受容体の糖鎖修飾抑制によるものかを更に調べた。炎症性腸疾患モデルでは、マンノースを同時に投与する事で解糖系の抑制には効果がないが糖鎖修飾の抑制は解除されて2-DGの抗炎症効果が抑制された事、Tunicamycinは副作用が強く体重減少が見られるものの超組織での炎症が抑制されたことから、生体内でも炎症性サイトカイン受容体の糖鎖修飾を抑制して炎症性疾患の治療に有効である事を見いだした。癌は炎症が持続した組織で発症することが病理学的・マウス発癌モデル実験で証明されている、そこで2-DGを継続的に飲ませたp53欠損マウスや家族制大腸腺腫症のモデルであるMinマウスでの腫瘍の発生を調べたところ、どちらも腫瘍の発生が抑制されたことから、発癌の抑制にも有用である事が実証された。
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