研究課題/領域番号 |
24659184
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
井上 敬夫 近畿大学, 医学部, 助教 (00441006)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 癌の浸潤・転移 / プロテオミクス |
研究概要 |
癌細胞の浸潤・遊走能を規定する要素の1つに、走化性因子の濃度勾配依存性に偽足突起を伸長する能力がある。この能力はin vitroの培養系で再現できる。穴あき透過膜上で癌細胞を培養すると、膜の下に走化性因子が存在すれば、高浸潤能の癌細胞は透過膜のポア内へ偽足を伸長する。本研究課題では、様々な癌細胞がこの培養系で形成する偽足突起を選択的かつ効率的に単離する方法の確立を目指す。そのためにエキシマレーザーを用いる。このレーザーは、生体組織・細胞に集光されると、組織・細胞を水平平滑に切離できるので、透過膜上面を切離面に設定すれば、照射によって細胞本体は除去され、一方、透過膜内には偽足突起が残存するはずである。この方法が成功すれば、偽足突起のプロテオミクスを革新的に発展させる原動力になると期待される。 平成24年度は、エキシマレーザーの照射至適条件を決定するためにMDA-MB-231(乳癌細胞株)を用いた。穴あき透過膜(ポアサイズ1um及び3um)をフィブロネクチンでコートし、ウェル内の走化性因子としてNIH3T3馴化培地を用いて偽足突起を形成させた。この透過膜をニッデク社において同社レーシック手術装置EC-5000 CXIIIを使用してArgon Fluorideエキシマレーザー照射による細胞体除去を試みた。この際、広い水平切離面を確保するための調整、レーザー出力及びレーザースキャン回数などを変更し、その都度、レーシック手術装置に装備されているCCDカメラやスキャン後の透過膜をHE染色することにより細胞体除去の至適条件の決定を行った。この至適条件を用いて細胞体除去を除去し、偽足突起のみが残っている透過膜を回収して偽足突起タンパク質の回収を試みた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に記載した24年度の成果は、【研究実施計画】の内容に従っているため、【おおむね順調に進展している。】と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実施計画】に従って研究を推進していく方針である。 平成24年度は乳癌細胞に焦点を置いて行ってきたが、乳癌細胞に関しては回収したタンパク質のプロテオミクス解析に発展させるとともに、その他の細胞株における偽足突起の形成のための条件検討も行っていく。この条件決定されれば、レーシック手術装置EC-5000 CXIIIによる細胞体除去の至適条件は乳癌細胞での条件を基準として微調整すれば良いのでその後の進展は速やかに進むものと考えられる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1) 薬品・消耗品の主たるものとしては、細胞培養用試薬(仔牛血清、培養液、走化因子、細胞外基質など)、プラスチック器具(培養ディッシュ、各種遠心チューブなど)、生化学的実験試薬(タンパク質抽出試薬、各種抗体、ウエスタンブロット用試薬など)が挙げられる。また本研究に特異的なものとして、偽足形成のためのtranswell(穴あき透過膜付きインサート)が大量に必要となるため、これをプラスチック器具に計上している。またプロテオミクス関連消耗品(2D-DIGE用試薬、質量分析用試薬など)についても計上している。 (2) 本研究課題に関する最新情報の交換や共同研究、試料採取・分与のために、奈良先端大学院大学、株式会社ニデック(愛知県)、国立がん研究センター(東京)などへの訪問を予定している。また、日本病理学会総会などでの研究成果発表を予定している。それらの旅費を計上する。
|