研究課題
がん細胞の生存・増殖に関わる様々なシグナル伝達が明らかになり,それら分子を特異的に阻害する分子標的薬は、現在のがん薬物療法の主役を担っている。その一方で、分子標的薬に対して治療抵抗性を示す症例も少なからず認められ、臨床的に重要な問題となる。がん細胞を取り囲む線維芽細胞は、がん細胞の生存・増殖に関わるシグナルに重要な影響を与えており、治療抵抗性の一要因と考えた。本研究ではPodoplanin陽性CAFsが、EGFR変異陽性肺腺癌細胞のEGFR-TKI耐性に与える機構を解析した。具体的な結果を以下に記す。1)PC-9+ PDPN-CAFs群では、EGFR-TKI投与後に59.9%の細胞が生存していた。一方PC-9+control CAFs群では48.2%の細胞が生存した(p<0.05)。一方、CAFsのPDPN分子をノックダウンすることにより、PC-9細胞の生存率増加はキャンセルされた。以上から、CAFsに発現しているPDPN分子は、PC-9細胞のEGFR-TKI耐性に寄与していることが確認された。4)EGFR-TKI投与後のPC-9細胞のpERK1/2, pAkt発現レベルは、PDPN-CAFsとの共培養群において、有意に上昇していた。5)術後再発肺腺癌症例を用いたレトロスペクティブな解析を行った。再発時EGFR-TKIに対する奏効率は、原発巣においてPDPN-CAFs陽性症例において有意に低かった。以上の結果から、PDPN-CAFsは、EGFR-TKIに対して機能的に抵抗性に働いている可能性が示唆された。
すべて 2013
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Chest
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10.1007/s00432-013-1502-5