研究課題/領域番号 |
24659187
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
石井 明 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (50107801)
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研究分担者 |
加藤 秀樹 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30142053)
山本 清二 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, 教授 (60144094)
永田 年 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90275024)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脳性マラリア / GFP遺伝子 / ネズミマラリア原虫 / イメージング |
研究概要 |
マラリア原虫感染後の重篤な合併症の一つである脳性マラリアを惹起する熱帯熱マラリア原虫に薬剤耐性が出現し、その原虫の拡散がマラリアの制御を困難としている。現在マラリアに対する治療法は薬物治療が第一選択であり、新規抗マラリア薬の開発や既知薬物と抗マラリア薬との併用の検討などが、マラリア制御を考える上で重要である。薬剤耐性出現に加え、脳性マラリアの発生機序の詳細は明らかとなっていない。実験的にネズミマラリア原虫感染マウスでヒトで見られる脳性マラリアに類似した症状が観察される。そこで、脳性マラリアのマウスモデルをさらに発展させ、イメージングによりリアルタイムに原虫の感染動態を評価する方法を確立し、脳性マラリアの発生機序の時間的・空間的変化を明らかにすることを目的として本研究を開始した。 GFP遺伝子導入ネズミマラリア原虫Plasmodium berghei ANKA株をC57BL/10マウスに感染させると感染後6日から運動障害などの脳性マラリア症状を惹起し、GFP遺伝子導入による原虫の生物学的性状に変化は認められなかった。次に宿主マウス流血中の赤血球内部の原虫をマウスの脳表の血管で観察するために、全身麻酔下にてマウスの頭蓋骨に小さい骨窓を設け生体内蛍光イメージングを行った。結果、感染後3日目(明らかな運動障害は認められない)の血管内の血流と感染後6日目(明らかな運動障害が認められる)の血流の間に違いが認められた。リアルタイムに原虫の感染動態を評価する方法を確立することができ、さらに改良を加えることで治療方法を検討するシステムに応用可能と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳性マラリアの病態は、ヒトや実験動物の感染個体の行動および死亡個体の組織標本観察から推測されている。また、病態を引き起こす分子の相互作用も徐々に明らかにされている。本研究は、GFP遺伝子導入マラリア原虫の血管内での動態を観察することから脳性マラリア発症の時間的経過をイメージングによりリアルタイムに解明することを目的に開始された。現在世界で使用されているin vivoスクリーニング法に代わり、新たに確立する方法を薬物活性の評価に導入できれば、薬物の抗マラリア活性評価のためのマウス使用数を減少させることが出来る。さらに、新規薬剤の開発や投与方法を検討する上で新たな戦略を生み出すことが期待される。 平成24年度で、宿主マウス流血中の赤血球内部の原虫をマウスの脳表の血管で観察するために、全身麻酔下にてマウスの頭蓋骨に小さい骨窓を設け生体内蛍光イメージングを行った。結果、感染後3日目(明らかな運動障害は認められない)の血管内の血流と感染後6日目(明らかな運動障害が認められる)の血流の間に違いが認められ、さらに観察後に骨窓を閉じてマウスを飼育観察することが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
脳性マラリアと直接関連するサイトカインについては不明な点が多い。感染者や動物実験などで特に関連性が疑われているIL-6、IL-10及びTNF-αに注目し、脳性マラリアを発症したマウスの血清中サイトカイン量と脳表血管内のGFP原虫の感染動態の相互関係を明らかにする。 ヒトでの脳性マラリアに著効を示す既知抗マラリア薬のアルテミシニンを投与した場合の時間的・空間的な感染状態を、イメージングにより解析する。薬理学的解析結果より、本システムが脳性マラリアに対する新規薬剤の開発や投与方法を検討する上で新たな戦略を生み出すことができるか否かを評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に計画した脳血管内のマラリア原虫の感染動態をイメージングによりリアルタイムに評価する方法の構築のため、新規に生体内蛍光イメージング用の蛍光顕微鏡を購入した。よって、次年度の研究費の用途の多くは、動物や試薬などの消耗品である。特に研究推進において重要なツールとなるサイトカイン等関連試薬に多くの経費を使用する。
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