研究課題/領域番号 |
24659188
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
新井 明治 香川大学, 医学部, 准教授 (30294432)
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キーワード | 細胞培養 / マラリア原虫 / 媒介蚊 |
研究概要 |
Plasmodium Mosquito Stage培養の評価系を改良する目的で、培養フラスコを用いての基礎実験を行った。感染マウスから採取した血液の血球成分に対してキサンツレンを添加して生殖体形成を誘導し、この混液を25cm2の培養フラスコに移して19℃で振盪培養を開始した。培養開始8日目にはフラスコ底面に接着しているオオシストが認められた。9日目にはオオシストは最大径12.5μmまで発育していたが、一部で底面から遊離して浮遊状態となっていた。培養10日目では大部分のオオシストが浮遊状態へと移行していた。細胞成分をギムザ染色したところ、オオシストの核分裂像が認められた。培養12日目のギムザ染色像では10日目よりも核分裂が進展していたが、一部のオオシストに変性傾向が認められた。培養13日目にはオオシスト数が激減しており、培養継続が困難となった。従来のチャンバースライドやマルチウェルプレートよりも効率良く培地の循環をはかる目的で、培養フラスコを用いての振盪培養を行ったが、シェーカーの仕様上の制約から振盪強度が強過ぎたことが、フラスコ底面へのオオシストの定着が完成されなかった要因であったと考えられる。また、培地交換の度にオオシストに対して過大な圧力負荷がかかったことが、接着しかけたオオシストを底面から遊離させたと考えられる。オオシストにおける核分裂の進行が認められたことから、フラスコによる振盪培養は有効な方法であることがわかったが、振盪強度についての再検討を要する。別のシェーカーに変更して振盪強度の軽減をはかり、最適条件を決定する。さらに重要な問題として、培地交換によるオオシストへの圧力負荷がオオシスト成熟の妨げとなることが示唆されたが、この問題を解決すべく、トランスウェルを用いるフォーマットで培養を行い、オオシストにかかる圧力負荷を最小限に抑えた状態でのオオシストの成熟をはかる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Plasmodium Mosquito Stage培養におけるオオシスト成熟ならびにスポロゾイト形成のため培養条件の最適化について検討していた途中で、培養に必須の機器である冷却循環装置が故障してしまった(平成25年10月)ため、培養実験を行うことができなくなった。同装置はメーカーから修理不能と宣告され、急遽代替機を購入せざるを得なくなった。ところが納入された代替機にも不具合(配管接合部の破断)が見つかり、交換に2ヶ月を要することとなり、平成26年3月にようやく培養実験を再開する準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
1)冷却循環装置のトラブルで進行が遅れた、オオシスト成熟ならびにスポロゾイト形成のため培養条件の最適化を早急に実施する。 2)ハマダラカ虫体抽出液調製のためのプロトコルを確立し、Plasmodium Mosquito Stage培養系におけるスポロゾイト形成率および機能的発育を促進するサンプルを得る。次いで、分画化したサンプルを用いて活性分画の性状を特定し、ハマダラカ因子を同定する。 3)ハマダラカ因子の添加によってスポロゾイト形成効率の改善が認められれば、培養由来スポロゾイトと蚊唾液腺由来スポロゾイトからサンプルを調製して、マイクロアレイ解析を行い、スポロゾイト成熟マーカー遺伝子を同定する。
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