研究課題
脳マラリアは、マラリアの最も重篤かつ重要な合併症であり主要な死因のひとつである。動物実験モデルとして、マラリア原虫Plasmodium berghei ANKA(PbA)のC57BL/6マウス感染モデルがある。ヒト脳マラリアとの異同について議論はあるものの、本モデルを用いて発症におけるCD8+T細胞の関与など様々な知見が明らかになっており、実験的解析及び介入が可能な有用なモデルである。我々は、脳マラリア発症マウスの脳内に抗原特異的に活性化したCD8+T細胞が集積すること、またそれだけでは脳マラリアの発症には至らないことを明らかにしている。従って発症におけるCD8+T細胞の役割は明確になっていない。本研究では生体イメージングの技術を駆使して脳マラリア病変を観察することにより、「脳血管内皮細胞によりマラリア抗原が抗原提示され、特異的CD8+T細胞が脳内で活性化される」という仮説を検証することを目的とした。研究の第一段階として発光イメージングを行うため、ルシフェラーゼを発現する組換えマラリア原虫をオランダの研究グループより入手した。この原虫をC57BL/6マウス(脳マラリアを発症)とRag KOマウス(脳マラリアを発症しない)に感染させ、発光検出器IVISを用いて感染後経時的に全身の発光イメージングを行った。両者を比較検討したところ、原虫の体内分布には明確な違いは認められなかった。特に頭部についても比較したが、発症マウスで頭部に原虫が集積している像は得られなかった。このことから脳マラリア発症には脳内への感染赤血球以外に重要な因子があることが推測された。
3: やや遅れている
本研究は、ルシフェラーゼ発現マラリア原虫を用いた発光イメージング、蛍光蛋白発現マラリア原虫を用いた多光子レーザー顕微鏡による生体蛍光イメージング、さらにアイソトープを用いたPET/SPECTイメージングを行い、脳マラリア発症過程を多角的に捕らえることを目指している。蛍光イメージングについては、多光子レーザー顕微鏡のセットアップ及び取り扱いの習熟に時間がかかった。また、PET/SPECTについても長崎大学先導生命科学研究支援センターに設置されたばかりであり、準備に時間がかかった。これらの要因のため、当初計画より研究は若干遅れている。
平成25年度は、本研究計画の最終年度であるため、研究計画に沿って初年度遅れた分も含めて行う予定である。
当初の研究計画の沿って行う。
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