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2012 年度 実施状況報告書

トキソプラズマにおける宿主オルガネラリクルート因子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 24659191
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

永宗 喜三郎  国立感染症研究所, 寄生動物部, 室長 (90314418)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードトキソプラズマ / ミトコンドリア / 小胞体 / 輸送
研究概要

トキソプラズマは宿主細胞に侵入した後、宿主細胞機能を様々に修飾することが知られている。中でも特に形態学的に顕著な変化として、宿主のミトコンドリアやERを原虫が増殖している寄生胞近辺に引き寄せる(リクルートする)という現象が昔からよく知られている。この現象を引き起こす因子として、原虫が宿主細胞に侵入する際に、原虫の侵入とは独立して宿主細胞に注入される一群のタンパク質、ロプトリータンパク質群の関与が強く疑われている。本研究において、まず本年度はこのロプトリータンパク質の注入機構について解析した。
まず、コレステロールが原虫のPV及びevacuole(eV)形成に及ぼす影響を調べた。eVは、原虫が宿主細胞に付着後、侵入する前に、宿主細胞内へロプトリータンパク質を注入する際に形成される小胞である。細胞膜からコレステロールを引き抜く作用があるMetyl-beta-cyclodextrin(MβCD)で宿主細胞を処理し、細胞のコレステロール含量を減少させたところ、原虫の侵入効率、すなわちPV形成能力は変化しなかったが、原虫によるeV形成は明らかに減少した。
次に、GPIがeV形成に及ぼす影響について調べた。GPIアンカー型GFP発現細胞を用いeVへのGPIの取込みを観察したところ、GPIは、PV同様eVへも取り込まれていた。次にGPI欠損変異細胞を用い、PV及びeV形成へのGPIの影響を観察したところ、PV形成は変化しなかったが、eVが過剰形成された。このGPI欠損によるeVの過剰形成はMβCDにより相補できなかった。これらのことから、宿主の脂質マイクロドメインに存在するコレステロールとGPIは、原虫によるeVの形成に対してそれぞれ独立的に作用し、正常なeV形成にはこの2種類の脂質のバランスが重要であるが、PV形成には両者は関与していない可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究はミトコンドリアをリクルートしているロプトリータンパクを同定することにある。しかしながら現在、そのロプトリータンパクの注入機序の解析に留まっている。この情報は本来の目的達成にも必要な情報ではあるが、来年度はリクルートメントファクターの同定に集中していきたい。

今後の研究の推進方策

トキソプラズマ・ゲノムデータベースを検索することにより現在ゲノム中に55個のロプトリー遺伝子が存在することが予想される(http://toxodb.org)。これらの遺伝子の全てにFLAG-HATタグ、あるいはGST-HAタグを付加したコンストラクトを構築する。次にこのようにして作製したコンストラクトを大腸菌において発現させ、付けたタグを用いて精製し、精製ロプトリータンパク質標品を得る。得られたロプトリータンパク質を、ミトコンドリアあるいはERと混合、インキュベートして宿主オルガネラに結合させ、遠心沈殿による洗浄後に可溶化処理を行い、ダブルタグを用いた二重の免疫沈降により精製する。ミトコンドリアやERの分離は市販のキット(Mitochondria Isolation Kit for Tissue (Thermo Fisher Scientific)、Endoplastic Reticulum Enrichment Kit (IMGENEX)など)を用いる。各オルガネラの含有量が高く高純度での分離が期待できるよう、ミトコンドリアはウシの心臓、ERはマウスの肝臓をそれぞれ出発材料に用いる。

次年度の研究費の使用計画

上記の目的を達成するために、引き続き適切に予算を執行していく。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] トキソプラズマ症と沖縄県におけるトキソプラズマの流行状況について2013

    • 著者名/発表者名
      喜屋武向子、松原立真、永宗喜三郎
    • 雑誌名

      防菌防黴

      巻: 41 ページ: 19-28

  • [雑誌論文] アピコンプレクス門原虫が産生する植物ホルモン様物質とその作用2012

    • 著者名/発表者名
      永宗喜三郎
    • 雑誌名

      日生研たより

      巻: 58 ページ: 24-28

  • [雑誌論文] Gibberellin Biosynthetic Inhibitors Make Human Malaria Parasite Plasmodium falciparum Cells Swell and Rupture to Death.2012

    • 著者名/発表者名
      Toyama, T., Tahara, M., Nagamune, K., Arimitsu, K., Hamashima, Y., Palacpac, N.M.Q., Kawaide, H., Horii, T., and Tanabe, K.
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 7 ページ: e32246

    • DOI

      e32246

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 生水と原虫症(生水のリスク)2012

    • 著者名/発表者名
      泉山信司、八木田健司、永宗喜三郎
    • 雑誌名

      公衆衛生

      巻: 76 ページ: 50-53

  • [雑誌論文] Toxoplasma gondii2012

    • 著者名/発表者名
      福士路花、松原立真、永宗喜三郎
    • 雑誌名

      原生動物園

      巻: 3 ページ: 3-7

  • [雑誌論文] トキソプラズマ症2012

    • 著者名/発表者名
      永宗喜三郎
    • 雑誌名

      感染症発生動向調査 感染症週報

      巻: 15 ページ: 20-25

  • [学会発表] トキソプラズマ感染における宿主細胞膜マイクロドメインの役割2013

    • 著者名/発表者名
      田原美智留、Syed Bilal Ahmad Andrabi、青沼宏佳、木下タロウ、永宗喜三郎
    • 学会等名
      第82回日本寄生虫学会大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20130329-20130331
    • 招待講演
  • [学会発表] アピコンプレクサ生物の滑走運動とカルシウム・シグナリング2012

    • 著者名/発表者名
      永宗喜三郎、福士路花
    • 学会等名
      第45回日本原生動物学会大会
    • 発表場所
      兵庫県姫路市
    • 年月日
      20121123-20121125
    • 招待講演
  • [学会発表] 宿主細胞膜マイクロドメインがトキソプラズマ感染に及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      田原美智留、Syed Bilal Ahmad Andrabi、青沼宏佳、木下タロウ、永宗喜三郎
    • 学会等名
      第1回日本細胞共生学会若手の会
    • 発表場所
      静岡県下田市
    • 年月日
      20121107-20121109
  • [学会発表] 宿主細胞膜マイクロドメインがトキソプラズマ感染に与える影響2012

    • 著者名/発表者名
      田原美智留、Syed Bilal Ahmad Andrabi、青沼宏佳、木下タロウ、永宗喜三郎
    • 学会等名
      第72回日本寄生虫学会東日本支部会・第10回分子寄生虫学・マラリアフォーラム合同大会
    • 発表場所
      群馬県前橋市
    • 年月日
      20121012-20121013
  • [学会発表] The effect of host GPI to Toxoplasma gondii infection.2012

    • 著者名/発表者名
      Nagamune, K., Tahara, M., Andrabi,S.B.A., Aonuma, H., and Kinoshita, T.
    • 学会等名
      Molecular Parasitology Meeting XXIII
    • 発表場所
      Woods Hole, MA, USA
    • 年月日
      20120922-20120926
  • [学会発表] 宿主マイクロドメインがトキソプラズマ感染に及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      田原美智留、Syed Bilal Ahmad Andrabi、青沼宏佳、木下タロウ、永宗喜三郎
    • 学会等名
      第20回分子寄生虫学ワークショップ
    • 発表場所
      神戸市
    • 年月日
      20120826-20120829
  • [学会発表] 宿主アンカーがトキソプラズマ感染に及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      田原美智留、Syed Bilal Ahmad Andrabi、青沼宏佳、木下タロウ、永宗喜三郎
    • 学会等名
      第1回マトリョーシカ型生物学研究会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120700
  • [学会発表] あなたの知らない寄生虫のセカイ ~トキソ、マラリア、マトリョーシカ~

    • 著者名/発表者名
      永宗喜三郎
    • 学会等名
      第63回バイオeカフェ
    • 発表場所
      つくば市
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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