研究概要 |
本研究は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来赤血球細胞を用いた、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax,以下 P.vivax)の培養系の確立を目的とした。具体的には、iPS細胞から赤血球分化誘導を行い、国立国際医療研究センター(NCGM)病院で採取された三日熱マラリア患者の感染血液と共培養を行い、分化誘導細胞にP.vivaxが感染するかどうか、分裂・増殖するかどうか、様々な培養条件を検討して研究した。 25年度は引き続き、ヒトiPS細胞より赤血球系細胞の分化誘導の検討を行った。用いたiPS細胞はNCGM疾患制御研究部において作成されたSe-V iPS細胞、および国立生育医療研究センターで作製された#25細胞を用いた。それぞれのiPS細胞は、Essential 8培地とGELTREX(Lifetechnology社)コートのシャーレを用いた無フィーダーで、週二度の継代培養で未分化状態を維持した。 赤血球への分化誘導は、同様Elizabeth S. et al(2005)の浮遊培養法により行ったが、スフィアーの形成の効率を上げるために、未分化細胞の処理にCKT solution(細胞はく離液)を用いて行った。浮遊培養開始後3~5日で球状に集合したスフィアーを形成した。2~3日ごとに培地交換を行い培養を継続した結果、培養開始40日後にスフィアーの一部が赤化した赤芽球の作製に成功した。赤化したスフェアーは、その後顕微鏡下で単独採取し、ガラスボトムのシャーレに移して接着培養を開始し、三日熱マラリア原虫感染の準備を行っている。残念ながら24~25年度中に三日熱マラリア患者の来院が無く、三日熱マラリア原虫を本研究に供することができていない。そこで現在、培養熱帯熱マラリア原虫を用いて、作製されたiPS細胞由来赤芽球への感染を試み、電子顕微鏡レベルでその確認を行っている。
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