研究課題
リステリア菌株間のサイトカイン産生誘導能の比較から、リステリアの標準的な病原菌株として用いられるEGD株に比べてLO28株は強いIFN-β産生誘導能を示す。これは、菌株間の細胞内増殖能の優劣や、細胞質内で病原体センサーを刺激する菌由来DNAの分泌量の違いによるものではなく、LO28株の強いcyclic-di-AMP産生能に起因することが示された。LO28とEGD株の比較ゲノム解析の結果、LO28株ではmultidrug resistance transpoterの一つであるMdrTの発現を制御するtetRに遺伝的欠損があり、MdrTの発現が亢進していること。また、LO28株ではcyclic di-AMPは主にMdrTを介して菌体外に放出されることが示された。さらに、cyclic di-AMPはSTINGが関与する異物識別経路を刺激してIFN-β産生を誘導することが示された。リステリアの抵抗性に及ぼすMdrTの影響を調べるため、LO28のmdrT欠損株をマウスに感染させた。mdrT欠損株の感染で誘導されるIFN-β量はLO28株感染の場合に比較して明らかに低いレベルであった。しかし、mdrT欠損株の臓器内菌数はLO28株よりも有意に高い値を示した。一方、type I IFNレセプター欠損マウスはリステリア感染に対して抵抗性を示したことから、cyclic di-AMPがIFN-β産生以外に宿主防御反応の亢進に関与するのか、あるいはMdrTはcyclic di-AMPは以外にも宿主感染防御を刺激する因子の放出に関与する可能性が示された。
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