研究実績の概要 |
IV型分泌系のコア複合体は内膜側半分が中空構造をしており、実際の分泌活性のある超複合体の形成には、さらなる内膜タンパク質の組み込みが必要であると想定される。一方で、コア複合体は閉じた構造をしており、内膜タンパク質を組み込むには何らかの構造変化が必要であると考えられた。IV型分泌系の機能未知のATPaseであるDotOはこのコア複合体と内膜タンパク質の双方と相互作用することから、輸送活性のある超複合体を形成する過程で機能すると考えた。本研究では、コア複合体・内膜タンパク質・細胞質ATPaseを含む超複合体の存在を検証し、その形成におけるATPaseの役割を検討することを目的とし、遺伝学的・生化学的解析を行った。その結果、1)内膜タンパク質DotI, DotJが安定なヘテロ複合体を形成すること、2)DotIあるいはDotJの内膜貫通領域依存的にDotIJとDotO ATPaseの間に遺伝学的相互作用が見られること、3)コア複合体と内膜DotIJの間に弱い生化学的相互作用がみられること、を明らかにした。これらは、コア複合体-DotIJ複合体-DotOの超複合体仮説を支持している。別グループによるR388接合伝達系(IVA型)の解析(Low et al. Nature 2014)も、コア複合体・ATPaseを含む超複合体の存在を示唆している、しかしながら、レジオネラのDot/Icm IVB型分泌系から生化学的に安定な超複合体を単離することは出来なかった。今後、生細胞の電顕トモグラフィなどの手法により、生細胞中での不安定な超複合体形成を直接検出することが、超複合体およびATPase機能の解析に必須であると考えている。
|