研究課題
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は胃・十二指腸の消化性潰瘍の発症に関与するだけでなく、胃癌やMALTリンパ腫などの悪性腫瘍疾患に関わる病原細菌である。とくに、ピロリ菌に知られる病原因子の中でもVacAは唯一の蛋白毒素であり、菌体内での産生や分泌される過程で切断などの修飾を受け、更には分泌後においてもその高次構造を大きく変化させてホロ毒素として空胞化活性などの多様な毒性を発現している。しかしながら、「VacA遺伝子はすべての菌株が保有するにもかかわらず、ホロのVacA毒素を産生・分泌して細胞毒性などが検出できる菌は50%程度にとどまる」ことが知られている。そこでこうした事実の背景と仕組みを知り、疾病予防と治療戦略立案に資する分子基盤を明らかにすることを目的としている。ピロリ菌のVacA産生について、平成24年度からピロリ菌培養における種々の条件の検討によりこの毒素の産生を促す因子および培養条件の検討を加えてきた。報告書にあった「今後の研究の推進方策」の平成25年度計画に記載したようにウシ血清など各種栄養素、サイクロデキストリン、金属イオンなどを現在使用している液体培地に添加し、ピロリ菌の増殖の速度と生育およびVacA産生量の比較を検討すること、さらにピロリ菌関連学会への参加を通して関係する多くの情報を他の研究者から得て新たな方策の立案に努めた。用いた血清濃度に比例してピロリ菌の増殖が増加し、サイクロデキストリンの添加はこれを更に促した。VacA産生量は対数増殖期から増加し、ピロリ菌の増殖に並行していた。また、VacAと相互作用するピロリ菌体内因子の検索についても抗VacA抗体を用いたアフィニティカラムを用いて引き続き検討を試みた。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
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