研究課題/領域番号 |
24659200
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
山岡 吉生 大分大学, 医学部, 教授 (00544248)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / 病原因子 / タンパク精製 |
研究概要 |
本研究では、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の病原因子であるはOipAの直接的な機能やその相互作用分子の解明を目的としている。OipAについて生化学的解析を行うために、まずはピロリ菌の大量培養法を確立した。ピロリ菌は液体培地での継代培養では増殖しないことがわかったため、多くの寒天培地上で培養した後、5Lフラスコをピロリ菌培養用気体で充填して液体培養を行うことで、一度に10L培養可能なピロリ菌大量培養方法を確立した。 ピロリ菌の病原因子の一つであるOipAについて生化学的解析を進めるために、組み換えタンパク質の作製を試みたが、当初は大腸菌では発現が確認できなかった。様々な組み換えタンパク質発現法を試み、コムギ胚芽を用いた無細胞合成系で組み換えOipAの発現に成功した。この組み換えOipAの可溶化を行い、精製法を確立することができた。一方、ピロリ菌からのnative OipAの分取には成功していないため、現在検討を行っている。組み換えOipA単量体が得られたことで、今後はこの分子をプローブとして、相互作用分子の探索を行えるようになった。機能不明分子の機能解析を行うためには、相互作用分子の探索は非常に有効な手法であるが、これまで得られていなかったOipA単量体が得られたことは、今後のOipA解析に向けた重要な一歩となった。 OipAを含む超分子複合体の解析を進めるために、現在はピロリ菌の菌体破砕方法の検討を行っている。この際の破砕方法により、OipAが分解してしまうことから、OipAは生化学的に不安定な分子であることがわかった。今後は、OipAが分解されないような破砕方法を確立する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コムギ胚芽を用いた無細胞合成系で組み換えOipAの発現に成功し、可溶化および精製法を確立することができた。これにより研究実施計画通り、OipA単量体の分取に成功した。 一方、OipAを含む超分子複合体の分析については、OipAが生化学的に非常に不安定ということがわかり、超分子複合体の同定には至っていない。抗OipA抗体により、培養したピロリ菌中にOipAが発現していることは確認できており、菌体破砕の過程でOipAが分解することがわかったため、OipAが分解しない温和な破砕方法の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
組み換えOipAの精製に成功したので、円二色性分散計などを用いた二次構造分析、分光光度計による分析などを行い、物理化学的解析を進める。OipAを含む超分子複合体をピロリ菌から精製することを試みる。この複合体が解離しないような可溶化条件を探索する。沈殿法を繰返し行う精製法を試みるなど、複合体が解離しないような穏和な条件下にて精製を行う。組み換えOipAをプローブとして、免疫沈降法などにより、OipAと相互作用する宿主細胞由来分子およびピロリ菌由来分子の探索を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
組み換えOipA作成は、困難と考え様々な方法を考慮していたが、無細胞合成系を使う計画に早めに切り替え、コムギ胚芽を用いた無細胞合成系で組み換えOipAの発現に成功することができ、若干の研究費を次年度に繰り越すことができた。25年度は、これらの資金も合わせて、二次構造分析、分光光度計による分析などを行い、物理化学的解析を進め、予定以上の成果を上げたいと考えている。
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