研究課題
細菌型mitoNEETは [2Fe-2S]クラスターをもつ可溶性蛋白質であり、電子伝達、あるいは生体内レドックス・バランスと対応した新しい生体内システムと推察される。高度好熱菌 およびシアノバクテリアのゲノム情報より見出した細菌型mitoNEETホモログ(TthNEETおよびPirB)およびにつき、構造機能生理解析を連携して行い、平成24年度には以下の主要成果を得た。1. T. thermophilus HB8のTthNEET0026欠損株と野生株の生育および網羅的メタボローム比較解析結果を再検討し、欠損株で生育回復しうる栄養源同定を試みた。真核細胞mitoNEETでは、鉄輸送系とのリンクが推察されているが、培地にFe2+、NADPH前駆体を添加しても生育阻害の回復は認められなかった。次年度も検討を続け、これまでの構造解析結果と合わせ、今後論文として発表する。2. Hisタグ付加したTthNEET0026の相同組換株を作成したが、欠損株と同様に生育阻害された。次年度は欠損株とHis-tagつきTthNEETとを利用し、in vitroでTthNEET結合蛋白質同定を目指す。3. シアノバクテリアPirBのC末側が膜結合に寄与することを見いだし、可溶性酵素としての高発現系を作成した。結晶化を試みたが、酸素感受性が高く成功していない。また、シアノバクテリアpriB遺伝子欠損株を作成し、次年度にDNAマイクロアレイ解析を行う計画である。4. ラットmitoNEET結晶構造解析を行い、各種薬剤との共結晶作成、構造解析を試みた。このうち、一つにつき、2.5A分解能で薬剤結合型mitoNEET構造解析に世界で初めて成功し、薬剤結合部位の一つを同定することができた。次年度は薬剤非結合型の高分解能データ解析を行い、今後論文として発表する。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度は、「細胞増殖に影響する細菌型MitoNEETの網羅的オミックス解析」を目的として、厳選したモデル微生物(高度好熱菌、シアノバクテリア)を材料に、当初計画課題に取組んだ。とくに、(1)メタボロームデータ再整理に基づく欠損株と野生型の表現型比較、(2)結晶化、結晶構造解析を中心にすすめた。(1)細菌型ホモログTthNEETでは、鉄イオンやNADPH原料等(ニコチンアミドなど)は欠損株増殖に大きな改善効果がなく、メタボローム解析結果をもとに他要因を検討中である。DNAマイクロアレイ解析については、材料作成に重点をおいたが、次年度への展望が開けた。(2)結晶化、結晶構造解析については、膜酵素全体構造解析については進展しなかったが、真核細胞mitoNEETの薬剤結合型結晶構造解析に世界で初めて成功し、当初想定していなかった展望が開けた。以上の主要成果を勘案し、全体としては順調に進展したと考えている。
平成25年度は、前年度の進捗状況をもとに、引き続き下記研究課題に取り組む計画である。(1)シアノバクテリアの細菌型mitoNEETホモログpirB欠損株の作成を継続して行い、これをもとにpirB欠損株のゲノムワイドなDNAマイクロアレイ解析、表現型解析をすすめる。(2)プルダウンアッセイが成功しなかったため、方針を変更し、好熱菌TthNEET欠損株を利用したTthNEET結合蛋白質同定を継続してすすめる。(3)前年度の結果をもとに、結晶構造解析を中心にすすめ、今後論文として発表することを目指す。
基本的大型測定機器は揃っている。このため、平成25年度は、主として下記項目に本研究費を使用する計画である。(1)DNAマイクロアレイ、培地類、分子生物学および生化学キット類、冷媒等の消耗品費。(2)連携研究者との連携研究のための内国旅費。(3)成果発表費(論文投稿、別刷代含む)。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
J. Am. Chem. Soc.
巻: 134 ページ: 19731-19738
10.1021/ja308049u
http://www.nms.ac.jp/fesworld/top.html