研究課題/領域番号 |
24659204
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
森石 恆司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (90260273)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 人獣共通感染症 / 非霊長類ヘパシウイルス / フラビウイルス |
研究概要 |
目的:2011年に、C型肝炎ウイルスに非常に近縁なウイルスが犬から分離され、Canine hepacivirus と命名された。本研究の目的は、Canine hepacivirusあるいは相同性が高いウイルスの我が国での存在を明らかし、その検出・診断方法を確立するとともに、その感染機構を解析し、ウイルス伝播機構を明らかにすることである。 本研究は、謎に包まれているC型肝炎ウイルスの起源を知る上で、ウイルス学的に非常に重要な意義があり、非霊長類動物からヒトへの伝播を解明する事で公衆衛生上、極めて意義がある研究と言える。 方法:犬の鼻スワブより本ウイルスの単離を試行したが、PCRおよびNestedPCRでは検出できなかった。ウイルス遺伝子を合成し、それをLuciferase遺伝子と融合し、抗体価検出用に使用した。また、ウイルス遺伝子検出方法としてPCRおよび血清中を確立した。 結果:15頭から馬血清を採取し、9頭が抗体価が陽性を示し、内二頭からCHVと相同性が高い異なるウイルス遺伝子を単離した。また、抗体価が陰性の一頭からウイルス遺伝子を検出され、その配列の一部を比較したところ、抗体価陽性の馬から単離した遺伝子の一つとほぼ同一であった。少なくとも2種類のCanine hepacivirus と相同なウイルスが、我が国の馬にも感染しており、その配列は2012年に報告されたUSAのウイルス遺伝子と非常に高い相同性を示していた。 考察:C型肝炎ウイルスはヒトとチンパンジーのみしか感染性を示さないことから、非霊長類動物種からどのような進化を経て、C型肝炎ウイルスとしてヒト科に定着したのか明らかにできるかもしれない。また、エマージング感染症としての可能性を予測する上で極めて社会的意義は大きいと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の研究計画は、ウイルス遺伝子を犬から単離するか合成する予定であった。犬から単離出来なかった事から、合成したウイルス蛋白質を用いて、抗体価アッセイ系を確立した。それを用いて馬血清中にウイルス遺伝子を検出・単離できたことは期待以上の成果があった。ウイルス遺伝子の全配列は、3’末端の一部はまだ同定出来ていないが、ほぼ決定できており、次年度ウイルス培養系を確立する上で、非常に高い成果を得たと考えている。また、調べた限り、馬15頭中3頭が少なくともウイルスに感染しており、抗体価からそれ以上の馬が過去に感染していたと思われる。馬への病原性およびヒトへの感染が可能か現段階では明らかになっていないが、公衆衛生上および社会的に意義は高く、その農水行政および厚生行政に今後の研究で大きく影響が出てくるかもしれない。以上のことから、本研究は期待以上に進行しており、来年度の研究計画も高い確率で達成できることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究計画は、当初の計画通り、ウイルスコア蛋白質のプロセッシングおよびウイルス複製および感染システムの確立である。平成24年度の研究計画が予想以上の結果を示し、平成25年度も計画通り行う。 1キャプシド蛋白質のプロセッシングおよび性状解析:既にウイルス遺伝子を得ているのでCHVおよび馬のNPHVのコア蛋白質を用いて、C型肝炎同様の成熟過程を経るのか、培養細胞による強制発現などで解析する予定である。また、少なくとORFの領域は手に入ったので、その他のウイルス蛋白質のプロセッシングの解析も行いたい。 2ウイルス複製・感染システムの確立と複製機構の解明:ウイルス遺伝子を含む血清を得ている事からその培養上清を培養細胞に添加し、そのウイルス増殖をブラインド継代によって培養細胞によるウイルス培養系確立を目指す。また、ウイルス遺伝子から、ウイルス複製を模倣するレプリコン細胞系作成を行い、そのウイルス複製機構の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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