研究課題/領域番号 |
24659205
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土方 誠 京都大学, ウイルス研究所, 准教授 (90202275)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 肝幹細胞 / C型肝炎ウイルス |
研究概要 |
本研究ではこれまでに市販の初代培養ヒト肝細胞から独自に得たヒト肝幹細胞様細胞(HYM1細胞)を肝実質細胞に分化させることにより、C型肝炎ウイルス(HCV)が感染増殖することが可能な培養細胞系を樹立することを第一の目的とした。そこでこれまで用いてきた肝細胞用無血清培地を用いてHYM1細胞を長期培養して、その肝細胞への分化程度を肝細胞特異的に発現している遺伝子群の発現をそれらのmRNAをRT-PCRによって検出することにより解析した。その結果、アルブミンの遺伝子は高く発現誘導されていることは確認できたもののCYP遺伝子群の発現は低く、まだ完全に成熟した肝細胞に分化していないことが考えられた。また、近年HCVのゲノム複製に重要な役割をもつことが報告されているmiR122の発現も低レベルに留まっていることがわかった。上記の結果から想定されたように組換え体HCVの感染は現時点においては確認されていない。しかしながら、最近報告されたHBVの感染に機能する受容体と報告されているナトリウム胆汁酸のトランスポータータンパク質であるNTCPの発現は上記培養条件で誘導されていたことから、HBVの感染に関しては現時点における分化段階でも可能性があると考えられた。 また、HCV感染した細胞をレポーター遺伝子発現によってマーキングする、いわゆる感染インジケーター細胞の開発を計画通りにおこなっている。細胞内膜に係留するように作成した転写活性化因子がHCVのセリンプロテアーゼ活性依存的に膜から遊離するようにデザインしたところ、組換え体HCV感染依存的に膜から遊離し核内でレポーター遺伝子の転写を誘導した。現在まだHCV感染前のレポーター遺伝子発現が比較的高いため、さらなる実験系の改変をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HCV感染細胞を標識するための感染インジケーター細胞の開発は、さらにバックグラウンドのレポーター遺伝子発現の低下や感度の恒常など解決すべき問題は残されているものの、比較的想定されたように進んでいる。しかしながらヒト肝幹細胞からの成熟肝細胞の分化に関しては、HCVゲノム複製に重要と考えられるmiR122の発現がまだ低レベルにすぎないことなど、HCVの感染増殖を可能とする既知の細胞性因子についても認められていない。これらのことはHCV感染増殖にはさらに成熟した肝細胞への分化が必要であることが考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
HCV感染インジケーター細胞の開発には、以下の改変をおこなう。1.転写活性化因子の膜繋留のための配列を細胞内膜に存在しているATF6などの細胞因子の膜貫通領域を用いる。2. HCVプロテアーゼで切断される部位の配列をより感度の高いものを用いる。3.レポーターの種類を肝細胞には発現していない細胞膜表面に発現するタンパク質を用いて、HCV感染後の細胞をそのタンパク質を指標にして回収できるようにする。最終的にこのインジケーターシステムをHYM1細胞に導入する。HYM1細胞の分化については当研究室でこれまでおこなってきた立体培養をおこない、さらに成熟した肝細胞への分化を試みる。また、もし培養条件下で成熟が進まなかった場合は、ヒト肝細胞キメラマウスに感染インジケーターシステムを導入したHYM1細胞を導入し、肝臓形成をおこなう。このHYM1ヒト肝細胞キメラマウスにHCVを感染させた後、ヒト肝細胞を分取し、培養してHCV感染HYM1細胞を分取してその性状解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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