研究課題
ヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)は、βヘルペスウイルス亜科に属する。T細胞に主に感染し、子孫ウイルス粒子を産生することができる。今回我々は、T細胞に発現し、免疫シナプス形成に重要な働きをするCD6が、HHV-6感染細胞の膜面から発現低下していることを見出した。さらにその発現低下は、膜面のみならず感染細胞内でも低下していることが明らかとなった。そこで、そのCD6発現低下が感染のどの時期でおこるのかを確認するため経時的に発現低下を解析した。その結果感染後12時間では既に発現低下が見られた。次にウイルスDNA合成が必要か否かを解析するためウイルスDNA阻害剤であるPFA存在下でHHV-6感染を行い、CD6発現を解析した。その結果、CD6発現低下は、PFAの存在下でも起こることが明らかとなった。次にHHV-6のどの遺伝子がこの発現低下に関与しているのかを解析することにした。HHV-6には、特異的な遺伝子クラスター、U21-U24が存在する。そこでその遺伝子クラスターがこのCD6発現低下に関連性がないかを解析した。本仮説を検証するためHHV-6よりこのクラスターを欠損させたウイルスゲノムを大腸菌内での組換えにより作製した。欠損させた遺伝子群は、ウイルス増殖には非必須であったため、この遺伝子群を欠損させたウイルスは、ウイルスゲノムから再構築された。そこでこの欠損ウイルスを用いて野生型ウイルスと比較することによりその作用を検討した。結果、欠損ウイルスは、野生型ウイルスに比較してCD6発現低下を抑制するように思われた。しかし、感染状態によりその差は明らかとならないケースもあった。本データからは、このクラスターがCD6発現低下に機能していると結論付けることはできないが関与している可能性は示唆された。HHV-6は、感染により免疫シナプス形成に重要であるCD6を発現低下させ、この現象は宿主の免疫回避に一躍を担っていることが考えられた。
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Virology
巻: 450-451 ページ: 98-105
10.1016/j.virol.2013.12.004.