研究課題
外来性抗原はエンドサイトーシスで取り込まれたのちMHCクラスII分子により提示されヘルパーT細胞を活性化する。一方、細胞内で新規合成された抗原はMHCクラスI分子に提示され細胞傷害性T細胞を誘導する。本年度の研究では、MHCクラスII抗原提示経路に効率良く誘導できるよう、抗原を人工的に分子修飾(分子設計)する方法を検討した。◆LAMP1との融合LAMP1は粗面小胞体で合成され細胞膜に到達したのちエンドサイトーシスにより取り込まれてMHCクラスII分子と共局在する。HIV Gag蛋白をこの経路に誘導するため、膜貫通配列-Gag-LAMP1を作製した。単球系培養細胞(ヒトTHP-1細胞、マウスRaw264.7細胞)での発現をelectroporationで試みたが、transfection効率および生存率が悪かった。そこで、上皮系培養細胞(ヒトHeLa細胞)で発現させ、蛋白合成阻害剤サイクロヘキシミドを添加して新規合成を止めるとともに、プロテアソーム阻害剤(MG-132+cLL)あるいはリソソーム阻害剤(クロロキン)を添加して培養した。経時的に細胞を回収し、残存するGag抗原量をWestern blottingで調べたところ、新規蛋白合成を止めた場合には細胞内LAMP1-Gagは経時的に減少した。この減少はクロロキン処理で阻止されたが、プロテアソーム阻害剤では止められなかった。これらの結果から、LAMP1との融合によりGag抗原の輸送経路がプロテアソーム経路からリソソーム経路に変化したと考えられた。HLA DR分子との共局在は現在解析中である。◆Iiとの融合Ii分子はN末端にエンドソーム局在配列をもち、MHCクラスII分子に会合する。Gag蛋白にIi分子を融合させて分子修飾することを予定していたが、LAMP1による分子修飾で目的が達成できたため、本検討は中止した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究目標は、抗原をMHCクラスII抗原提示経路に効率良く誘導できるよう分子修飾(分子設計)することであった。抗原にLAMP1分子を融合させることにより、クロロキン処理で阻止されプロテアソーム阻害剤では阻止されない分解経路、すなわち、MHCクラスII経路に誘導することができた。
MHCクラスI抗原提示経路に効率良く誘導できるよう、抗原を人工的に分子修飾(分子設計)する方法を検討する。PEST配列あるいはユビキチン付加によるプロテアソーム分解を、クロスプレゼンテーション経路に誘導できるよう、抗原N末端改変を試みる。
◆MHCクラスI抗原提示経路への誘導MHCクラスIによる抗原提示経路は新規合成された内在性(endogenous)抗原は、プロテアソームで部分分解された後、粗面小胞体内でMHCクラスI分子と結合し、細胞表面に提示され、細胞傷害性T細胞を誘導する。次年度の研究では、MHCクラスI抗原提示経路に効率良く誘導できるよう、抗原を人工的に分子修飾する方法(PEST配列とユビキチンの付加)を検討する。すなわち、Gag蛋白のNあるいはC末端にPEST配列を付加する。また、N末端にユビキチンを付加する。これらをヒト293TやHeLa細胞で発現させ、蛋白合成阻害剤サイクロヘキシミドを添加して新規合成を止めるとともに、プロテアソーム阻害剤(MG-132+cLL)を添加して培養し、残存するGag抗原量をWestern blottingで調べる。◆クロスプレゼンテーション経路への誘導外来性(exogenous)抗原の一部はエンドサイトーシスにより取り込まれcytosolに逆輸送されたのち、プロテアソームで分解されMHCクラスI分子とともに細胞表面に提示される。次年度の研究では、エンドソームに取り込まれた外来性ウイルス抗原が1)膜融合や膜溶解でcytosolに侵入するとともに、2)ユビキチン化とプロテアソーム分解がおこるよう分子修飾する。すなわち、1)エンドソームでの膜融合と膜溶解:エンドソーム内のpH低下に応答して膜融合活性を示すpH応答性膜融合ペプチドGALAをウイルス抗原N末端に付加する。2)cytosolでのユビキチン化とプロテアソーム分解:N-end ruleに合致するようウイルス抗原のN末端アミノ酸を、蛋白を不安定にするアミノ酸に置換する。
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