研究概要 |
細胞内で合成された内在性抗原はユビキチン(Ub)化されプロテアソームで分解された後、粗面小胞体内でMHCクラスI分子と結合し、細胞表面に輸送され細胞傷害性T細胞を誘導する。細胞内発現のウイルス抗原をMHCクラスI経路に効率良く誘導できるよう分子修飾(分子設計)を試みた。 ◆ユビキチン化 プロテアソーム分解はUb依存的であることから、HIV Gag蛋白のN末端にUbを付加した。単球系培養細胞ではtransfection効率が悪かったため、上皮系細胞(HeLa細胞)で発現させた。サイクロヘキシミドを添加して新規蛋白質合成を止めるとともに、プロテアソーム阻害剤(MG132+cLL)あるいはリソソーム阻害剤(クロロキン)を添加して蛋白質分解を止めた。経時的に細胞を回収してGag抗原量を調べたところ、Ub-Gag蛋白はGag蛋白より効率よく分解されることが判明した。この分解はプロテアソーム阻害剤で阻止されたが、クロロキンでは止まらなかったことから、Ub付加によりGag蛋白はより効率よくプロテアソーム経路で分解されるようになると考えられた。インフルエンザHA蛋白の場合は、予め膜貫通配列を削除したHA1サブユニットのN末端にユビキチンを付加した。現在、同様の解析を行っている。 ◆N-end rule 蛋白質N末端のアミノ酸V, M, Gはその蛋白質を安定化し、Q, R, E, F, D, K は不安定化することが知られている。Gag蛋白のN末端アミノ酸MをRに置換し、Ubを付加した。HeLa細胞で発現させ、同様に、プロテアソーム阻害剤あるいはリソソーム阻害剤を添加して経時的にGag分解を調べた。R-Gag蛋白はM-Gag蛋白より効率よく分解され、この分解はプロテアソーム阻害剤で止められたが、クロロキンでは止まらなかった。従って、N末端アミノ酸MをRに置換することにより、Gag蛋白はより効率よくプロテアソーム経路で分解されると考えられた。
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