エイズ患者から同定した新しいヒトレトロウイルスの感染病理学的解析

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 24659212
• 研究機関: 国立感染症研究所
• 研究代表者: 片野 晴隆 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (70321867)
• 研究期間 (年度): 2012-04-01 – 2015-03-31
• キーワード: ウイルス

研究実績の概要

エイズ患者の剖検で採取した脾臓から核酸（DNAおよびRNA）を抽出し、次世代シークエンサーにより既知、および、未知のウイルスの存在を解析した。その結果、一人の患者から、サルの内因性レトロウイルスの一部に相当性のある遺伝子が同定された。この断片から全ウイルスゲノムをlong PCRで増幅し、その産物をシークエンスすることで塩基配列の決定を行った。全長は約8kbであり、増幅された遺伝子断片は、その中にgag, pol, protease, envと相同性のある配列を保持しており、既知のサルの内因性レトロウイルスと相同性が認められた。昨年度はヒトリンパ腫検体において、本レトロウイルスの存在をPCRで検索したが、全例が陰性であった。本年度はこのレトロウイルスが日本人健常者でどの程度蔓延しているか、その血清疫学を調べた。まず、GST融合タンパクシステムを用い、本ウイルスのgag, pol, protease, envタンパクを組換タンパクとして合成した。これを抗原にELISAの系を確立し、小児血清を用いて、陰性者の抗体価の平均と標準偏差を算出し、カットオフ値を設定した。次に、血清銀行に保存されている日本人血清約1,000人分における抗体価の調査を行なった。その結果、抗体陽性者はごく少数であり、日本人における本ウイルスの感染は極めてまれであることが示唆された。疾患との関連や感染性などは今後の研究課題である。

研究成果

• [雑誌論文] Detection of trichodysplasia spinulosa-associated polyomavirus in a fatal case of myocarditis in a seven-month-old girl. (2014)
  • 著者名/発表者名: Tsuzuki S, Fukumoto H, Mine S, Sato N, Mochizuki M, Hasegawa H, Sekizuka T, Kuroda M, Matsushita T, Katano H
  • 雑誌名: Int J Clin Exp Pathol 巻: 7 ページ: 5308-5312
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Classification of AIDS-related lymphoma cases between 1987 and 2012 in Japan based on the WHO classification of lymphomas, fourth edition. (2014)
  • 著者名/発表者名: Ota Y, Hishima T, Mochizuki M, Kodama Y, Moritani S, Oyaizu N, Mine S, Ajisawa A, Tanuma J, Uehira T, Hagiwara S, Yajima K, Koizumi Y, Shirasaka T, Kojima Y, Nagai H, Yokomaku Y, Shiozawa Y, Koibuchi T, Iwamoto A, Oka S, Hasegawa H, Okada S, Katano H
  • 雑誌名: Cancer Med 巻: 3 ページ: 143-153
  • DOI: 10.1002/cam4.178
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] The prevalence of opportunistic infections and malignancies in autopsied patients with human immunodeficiency virus infection in Japan (2014)
  • 著者名/発表者名: Katano H, Hishima T, Mochizuki M, Kodama Y, Oyaizu N, Ota Y, Mine S, Igari T, Ajisawa A, Teruya K, Tanuma J, Kikuchi Y, Uehira T, Shirasaka T, Koibuchi T, Iwamoto A, Oka S, Hasegawa H, Okada S, Yasuoka A
  • 雑誌名: BMC Infect Dis 巻: 14 ページ: 229
  • DOI: 10.1186/1471-2334-14-229
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり